DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
登場キャラの言動も個人の妄想です。
問題あればご一報を、対応いたします。
◆◆33話 夜道の依頼◆◆
「リュウガくん、出過ぎた真似だったって…謝ってくれたけど」
私にとっては素敵な言葉で、今も感謝してるとアイシスは言う。
「それがあなたの冒険者の原点だとしたら、なぜ彼と?」
常連客に絡まれて出来上がりつつあるスウィ~トをまめたが示す。
「ソーダの泉の味を確かめに来てた。襲われてて…助けた」
そしてそのバカは全然懲りていなくて、ハニーレイクにも行くという。
ちょうどパラディンとしての基礎を修めた頃で、このドワ男をどうしたものかと悩んだ時、懐かしい声を思い出した。
これも冒険者の縁ですから──。
そうしてアイシスのスウィ~トを守る旅が始まった。
「考えれば考えるほど…成り行き、だ」
苦笑いを浮かべる。でも特に嫌な気分になはならい。
「お話を聞いているとリュウガさんとパーティーを組んでもおかしくなさそうですね」
「あ、本当…」
まめたの言葉にアイシスが虚を突かれたように目を丸くしてから、穏やかにほほ笑む。
「でも、ワッサンボンはあれはあれで貴重で、守りがいもある…」
抱えていたざらめをすっと持ち上げ視線を合わせると、同意と言わんばかりに菓子袋の身体を揺らしてみせる。
「倒したい何かが居ない冒険者…そんな存在を守っていくのが、私の冒険(クエスト)、今はそれでいい…」
「貴重なお話ありがとうございます。野暮な聞き方でしたね。申し訳ない」
「ううん、口に出す機会は大事。ありがとうまめた」
お互いにぺこりと頭を下げ合って、二人はにこりと笑みを見せあう。
「しかし、次にレンダーシアを目指すとなるとグランドタイタス号の乗船パスが必要ですね」
「もしかして…お高い?」
「長く閉鎖されていた航路の再開ともなれば、プレミア価格でしょうね」
「むう」
「一部で有力者やお金持ちに先行販売されてるらしいけど、そこも争奪戦になりつつあるらしいからねえ」」
またお財布に響く展開と眉根を寄せるアイシスに、ユルさんも追い打ちだ。
「スウィ~ト~。無駄遣い、注意報…だよー」
「これは、おごりだから、らいじょうぶー」
呼びかけると、呂律の不安な返事が返ってくる。
「こらこら、節度は守ってもらわないと困るじゃないですか、まったく」
まめたが常連達をいさめてスウィ~トをテーブルへと連れ戻したが、少々足元がおぼついてない。
「ご馳走様…でした」
食事と情報の両方に礼を述べると、アイシスはスウィ~トを背負って踊る野兎亭を後にする。
「大丈夫?」
「うん、ありがとうー。あー夜風が気持ちいい…うん、歩けるから、降ろして」
外気に触れて少しばかり頭が冴えると、背負われている状態に照れが生じて、スウィ~トは早々に飛び降りる。
その事に気を止める事もなくアイシスは、少しばかり視線を逸らす相方に聞く。
「グランドタイタス号、どうしようか?」
「この町に来るとゴールドに悩んでる気がするなあ…さりとて一気に稼ぐのも難しそうだし、関連クエストに加わる事が出来れば…ワンチャン?」
「そんな旨い話…そうはない?」
「んー、あるといえばあるかも?」
突然、見知らぬ声が二人に混ざる。呼吸のタイミングにするりと入り込んだそれにスウィ~トは相槌を打つ。
「そういうのに一枚かめれば理想的だよね」
「いや、そもそも誰?」
アイシスの瞳に映るのは人間の女性だった。
天真爛漫な少女のような光を宿す青い瞳、対照的にその立ち振る舞いは洗練された大人の香り。
「あなた達に人助けの依頼を持ってきた依頼人かしら? ラズって呼んでね」
「わー、胡散臭い―」
抑揚のない声で答えるアイシスに、地味に傷つくわーなどと返しながらラズは距離を詰める。
「んーデジャブ。ミャジの時を思い出すなぁ」
「あの時は即快諾してたじゃない」
「あれは…依頼料が、ね」
そんな事も知ってるとはますます油断ならないと考えるアイシスをよそに、スウィ~トは緩々で話を続ける。
「人助けとグランドタイタス号につながりがー?」
「おっと、そこだった。知り合いが悪の組織に捕まってるんだけど、そいつらは今、裏でグランドタイタス号の乗船パスの偽物を売りさばいてるわけ」
「わお。本格的犯罪の匂いだー!」
でも偽物には用がないなあと告げるスウィ~トにラズはウィンクする。
「偽物を作るには、本物も必要じゃない? 救出と同時にそれも迷惑料としていただいちゃえば万事解決でしょ?」
「おー! 確かに!!」
「いや、確かにじゃない…さっきから話の流れが確実にヤバい」
アイシスの頬が引きつる。
このラズという女性はまさか……。