DQX及び蒼天のソウラの二次創作です。
ご注意を。
◆◆34話 ラズ イズ オーダー◆◆
まさか……。
ゴクリと生唾を呑み込むアイシスの様子に、彼女は「いい夜ですね」と同じくらい気楽に口を開く。
「そ、私もそういう世界の人間ってわけ。でもまあ…どこの世界にも仁義はあると思うのよ」
暗に危害を加える目的はないと示しながらラズは続ける。
「だから逆に、強制労働に知り合いを従事させるような相手は…相応に報いを受けてもらわなきゃ駄目よね♪」
自分達の欲しい物を提供する代わりに、裏社会のいざこざにに巻き込まれかけているとスウィ~トもついに気が付く。
「な、なんでボク達にこんな話を?」
「スウィ~トスター☆の肩書と目的がちょうどよかったの。まめたも言ってたけど、お菓子を求める冒険者としてそこそこ名が知れてきたアンタなら、怪しげな組織からチケットを入手しようとしても問題なしってね!」
「つまり…敵組織との接触役に大抜擢」
アイシスが沈痛な声を絞り出す。
「いや、待って! そんな理由でいきなりラズは自分の素性を出してまで依頼しに来たの」
自分が堅気でない事を告げる根拠がない。
まさか断ったら消してしまえるとか考えてるのかと、冷や汗を流しながらスウィ~トが問う。
「ん~、そこだけどねぇ」
真剣な表情で腕を組むラズ。
「さっき、魔族とつるんでやるーとか大層なこと言ってたじゃない? そういうの面白いやつだーって思っちゃったから、予定してた搦手はポイしちゃって、よし組もう!って即決しちゃった」
一転、誕生日プレゼントをもらった子供のようにはしゃいだ笑顔で言い放つ。
「つるむとまでは言ってない」
「軽い…」
あわや戦闘と身構えていたアイシスも脱力する程のノリ。
本当に裏社会の人間なのかと問いただしたい気分だ。
もっともスウィ~ト達には知る由もないのだが、ラズは自らの観察眼と直観に従い仲間に誘う事がままある。
まるで冒険者が酒場で仲間を集うように。
「で、最初に言った通り知り合い…サマベルのばあちゃんを助けたい。他の事は行きがけの駄賃みたいなものだけど、どうする?」
その名前の呼び方に込められた親愛が、根拠もなく感じられてスウィ~トは心を決める。
「その話に乗るよ! ラズはサマベルさんを助ける。ボク達は乗船パスをいただいちゃう」
「ん、ついでに悪の組織も全滅だ…?」
そもそも魔族と関わる事確定の自分達、今更裏社会くらいでビビってはいられない。
ららーっ♪
ラズの足元まで近づくとざらめも元気いっぱいに跳ねている。
「アンタも味方してくれるなら心強い♪」
ざらめを両手に乗せて語り掛けながら歩き出すラズを二人は追った。
数日後、彼らはレンドアの町を歩いていた。
グランドタイタス号が運航停止中でもこの町は活気に満ちている。
大地の箱舟と大小さまざまな船舶が物流の一翼を担い、各国連合のモンスター討伐隊本部もあるため人々の出入りは激しい島なのだ。
「やっぱり贅沢過ぎたんじゃあ?」
「いまさら何言ってるの…羽振りが良くなった冒険者じゃなきゃ、相手も食いついてこないでしょ」
それは分かっている。いるのだがスウィ~トは今の衣装の総額ゴールドを思い出して身震いする。
通常黒を基調にゴージャスな金糸で飾られるヴァンガードコートは春苺の華やかな色合いに染め上げられ、色を合わせたジェスターシューズには金の星が飾られている。
首元のスカーフと手袋の純白は清潔感を与え、食に携わる冒険者への信頼を高めている。
一方で頭上には煌めくハートプレートと完熟苺の乗せられたチョコケーキをモチーフにしたチョコハット。スウィ~トスター☆の存在意義を存分に主張し、楽し気で美味しそうなシンボルとして君臨している。
さらに言うならば、これらは冒険者仕様であり職人達の技術が存分に発揮され戦いの場にも過不足なく活躍する。
つまりは、それに見合うだけの資金が投入されているのだ。
ラズが率いる怪盗団の財布から。
「ラズベリー団恐るべし」
救出計画の全貌とともに聞かされた、ラズが怪盗団を率いる魔術師。つまりはボスであるとの一言には度肝を抜かれたものだったが、ポンとこれだけの品物をそろえる財力と人脈にも驚かされる。
「ところでこの眼帯は…?」
「それは箔がつくからね。歴戦の冒険者ぽいし似合ってるよ」
止めとばかりに渡されたピンクの眼帯。
メッシュも入っており見えないわけではないが、こちらもスウィ~トを惑わせている。
「ま、これで下準備は完了。いよいよだよ」
大剣を背負いワイルドな女剣士を装ったラズは、先を歩く筋肉質の男を示したのだった。
PS:写真協力感謝です!