DQX及び蒼天のソウラの二次創作です。
設定や人物の言動など個人の妄動です。
◆◆42話 魔族寄り合って◆◆
「病に伏し、あの甘党ドワーフに好き放題言われ、例の魔物の確保もままならず…あまつさえスボバすら未決着のまま戻る事になるとは! このマッシュウ不覚の極みですどー」
「いえ、最後のスボバはよくわからないのだけれど……苦労を掛けましたねマッシュウ。それにシロイロも」
片膝をつき大きな体躯を丸める様に畏まるドードーどりのマッシュウと、直立不動のエルフ風少女シロイロをリモニーザは労った。
「それにしてもスウィ~トスター☆…宣戦布告してくるとは、ずいぶんと勢いづいていますわね」
しかしなぜレシピの完成を先取りするなどと言うのか、リモニーザは考えあぐねる。
敵対するならば私達を滅ぼしにくればいい。
レシピの価値に気づいたのか? だけどそれは純粋により良い菓子としてだ。
「本当に、私を悔しがらせたいのか? く、わけがわからない」
苛立ちとともにあの緑の丸い顔が脳裏に浮かび、ますますリモニーザをいらっとさせる。
「もー、人の庭先で険のあるオーラださないでよねぇ」
まったくもうと頬に手を当てて嗜めたのは、この隠れ家の主ケケである。
「く、いえちょっと調子にのっているアストルティアの冒険者の顔が脳裏にチラついただけだから…ええ、もう落ち着いたわ」
気を静めてすまし顔を取り戻すリモニーザの言葉に、なるほどねぇとケケ。
「確かに水面下であの冥王が討ち取られた!なんて話も広がっているみたいだし……アストルティアの冒険者全体に、勢いがついてるのかもしれないわねぇ」
「その話、やはり間違いではないのね?」
大魔王と約定を結んだという冥王。
その力によってレンダーシア大陸を魔瘴の闇壁へと閉じ込めた存在。
国家の重鎮や大賢者…そして限られた冒険者達のみが暗闘していた冥王。
遙か五百年の時を経て、アストルティア世界にて直接誕生した魔王クラスの脅威。
ゆえに魔界生まれの多くの魔族達にとってもまた、冥王ネルゲルは謎多き存在だった。
「魔博士ちゃん達の方でも裏がとれたみたいだから、本当の事みたい。直接的に縁があったわけではないけど、複雑なところねぇ」
色香漂うウェディの姿とはいえケケもまた魔族である。
アストルティアに持つ好意とは別に、同族の覇道が潰えた事に言い表せぬ心情が湧く。
「確かに冒険者ども、気が抜けてるように見えて妙に手ごわいところがあるんだど。気づかぬうちに我らは甘く見てたって事だどー?」
マッシュウはここしばらくの戦いを思い出して、思い通りに勝負が決してこなかった事に戦慄する。
「どうかしらね。彼らの活気…生命力みたいなものの輝きは、侮れない事は確かだけど」
戦う力としても、存在としての魅力としてもと内心で付け加えるケケもまた、アストルティアの冒険者の影響を強く感じる一人であった。
「そこは、こちらの気の持ちよう。それよりもこれでレンダーシアは閉ざされた場所ではなくなる。大魔王様のキャンパスに無粋な者達が踏み入れるようになるわ」
その事実こそがリモニーザにとって受け入れがたい。
師を通じて大魔王マデサゴーラが、そこでいかなる芸術を花開かせようとしているか。
その断片をしる彼女は、それが汚される可能性が腹立たしかった。
「ねーねー! 聞いた聞いた~!? あのグランドタイタス号が近いうちに出航するらしいよ。あれ超豪華客船でぇ。あー乗ってみたいなぁ♪ 内装も乗客の服装も、料理とかお菓子も気になるところ多すぎ~♪」
とそんな眉間にしわを寄せた友人に気づかず上機嫌で饒舌にやって来たのはイズナである。
ケケの隠れ家はすっかり寄り合い所となっているのだ。
「な・ん・で・すってー!」
勢いよく振り返ったかと思うと、がしりと両肩を掴まえてくる友人の気迫にイズナの顔が引きつる。
「うえ、なにリモリモ、どったのおぉ!?」
「早すぎないかしら!? あれだけの大漁の魔瘴による封鎖海域がそんなにすぐに消えてなくなるものではないでしょう!?」
「え、グランドタイタス号の話!? いや、なんか…どっかの賢者が魔法のアイテムで対応するって聞いたけど」
「もう、アストルティアの民めぇ!」
「どーどーリモちゃん。落ち着いて。ね? お茶入れてあげるから…」
「いやーほんとアス民達も手ごわいよねぇ。グランドタイタス関係で悪い噂を流そうと暗躍してたヘルスラタールっちもやられちゃったみたいよ。ほら、リモリモの言ってたスウィ~トなんたら達に」
友人の興奮を抑えようとするケケの努力を粉砕するイズナの言葉に、リモリモもといリモニーザは吠えざるをえなかった。
「あの砂糖漬けドワ男ーっ!!」