DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈、公式との齟齬もあります。
ゲストキャラの言動も私の妄想です。
問題ありましたらご一報ください。
対応いたします。
◆◆56話 ココラタからの出立◆◆
「冥王も不甲斐ないなぁ」
ココラタの浜辺の様子を映した水晶玉には、冒険者達が次々と上陸していく様子が送られてきている。
苛立たしげに呟いた魔物の瞳には憎しみがどんよりと広がっていく。
「こういう輩がまた大魔王様の御心を乱すんや。魔界でもアストルディアでも……芸術を解さぬ害虫共がすぐにもぞもぞと集ってきよる」
長い舌がずるりと口元から這い出て蛇のようにうねる。
「ほんま美の真価をわかるもんが少なすぎるんや」
頭頂部の二対の角の間から長い首を下っていくたてがみが、怒りのに呼応してざわざわと震えていく。
「ん!?」
澱んだ瞳で憎々しげに映像を睨みつける魔物は、それに気づいた。
「なんや? ふぁっシロイロ!? なんで冒険者と一緒にシロイロが上陸してるんや!」
見覚えがあった。
それは間違いなく大魔王様の作品。
「まさか、あれバーウェンの連れてた女なんか? あの害虫もどきがくたばったかと思えば…弟子までもが大魔王様の時間を食いつぶすつもりなんか!」
貴重な創作時間を無神経に削り取る低俗な輩。魔物にとってはそれが真実だった。
今、その男のおまけが大魔王様の作品を連れまわしている。
「ひっひひひ…」
水晶玉を両手でつかみ上げて無意識に力を籠める。
血管の浮き出た筋肉質の腕が一回り太くなり水晶玉がぎしっと悲鳴を上げる。
「くそがっ! どいつもこいつもくそっがっ!!」
映像の中の女、リモニーザはアストルティアの民ドワーフと語り合っているように見える。
「排除や…冒険者も、この女も……すべて排除せなあかん」
がしゃりと握り割られた水晶玉の欠片が散らばる。
その一片にはドラゴンとキリンが入り混じったような魔物の横顔が映りこんでいた。
レンダーシア大陸の西、小さな漁村に降り立った人々は各々の目的にあわせて歩を進める。
村を回って話を聞く者、冒険者同士で相談する者、すぐさま村を出て目的地を目指す者。
「こんな事が、ありえるなんて……」
ユルール達もスウィ~ト達もすでに旅立った小さな村で、リモニーザは立ち尽くしている。
アストルティアの冒険者達はここに違和感を感じただけかもしれない。
だが魔族であり、僅かではあるが大魔王を知る彼女は、ここがすでに作品なのだと理解していた。
「世界を染め上げる…価値観の事ではなく、そのままの意味だったのね」
大魔王は絵画、彫刻、建築、菓子に至るまで多くの創作をへて、生命の表現を目指していた。
それはもはや命の循環、生から死へと続く多数の道のりそのものを生み出そうとしているのだと理解する。
「シロイロ…そしてナナイロもその過程だったなんて……」
スケールの大きさに改めて畏敬の念を抱きリモニーザは、思わずシロイロをキュッと抱きしめる。
?
もっともシロイロは主代行代理の感動に気づかず首をかしげている。
「リモリモ~。やっぱりイズナもご一緒しちゃうー♪」
とそこに駆け寄ってきたのは、面白そうだとスウィ~ト達を追ったはずのイズナだ。
気まぐれな彼女ではあるが、こうも早々と意見をひるがえすのは珍しい。
「どうしたの?」
「んーちょっと嫌な感じの男が接触してきてたから…あ、根拠はないのよぉ。でもイズナの勘は軽く見ない方がいいのよねぇ」
うーんとひとしきり難しい顔をしてみせると、ま、もういいか!と気分を切り替えている。
「で、やっぱりここって普通じゃないよね? 大魔王様にどうやって会うのぉ?」
実力者であるイズナもまた、違っている事を把握しているらしく、あっさり話題を変えて尋ねてくる。
「どこかで関係者を見つける…くらいかしらね」
「わーお! ノープラン!!」
歯切れ悪く口を開いたリモニーザに対して、イズナはとても楽しそうだ。
「ふぅ。こちらの旅に便乗して楽しむつもりなら、パーティ―の一員として働いてもらおうかしらね。チケット分の借りはここまでで十分でしょう」
「うぇ!? どうしたのリモリモ、冒険者みたいなこと言いだしてるよぉ」
少しばかりしたたかな反応が返ってきて、逆にイズナの方が素直に驚くとリモニーザがにっと笑う。
「ちょっと特別製のドラゴンの卵を探す必要もあって、マッシュウの代わりに抜擢させてもらいます。理由については道すがら話しましょう。不本意ですけど」
スウィ~トからの挑戦について語るのは業腹だが、実際人手は欲しかった。
「とりあえずは魔王様にお目通りね」
リモニーザはシロイロ、イズナと共に歩き始める。