DQX及び蒼天のソウラの二次創作
独自解釈、公式との齟齬もあり!
◆◆65話 これも縁◆◆
「再会はやかったねぇ。あ、本当に助けてくれてありがとうございました」
魔物達を蹴散らして直後スウィ~トは素直に頭を下げた。
自然と相好が崩れる。命を繋いだことが嬉しかったのは間違いないが、勿論それだけではない。
「リモニーザが命の恩人になるとは思わなかったよ」
そうなのだ。その事実が理屈なく喜びとなっていたのだ。
「レシピを持ったままに、このような場所に囚われたあなたのせいでしょう。グランドタイタス号に続いてまたしても不本意な……」
事態は把握しているのでしょうね?と詰め寄るリモニーザの剣幕にスウィ~ト達は互いに顔を見合わせる。
「なんかご先祖様への恨みつらみで拉致られて殺されかけてる感じっぽい」
「それに巻き込まれてる…かも?」
らら~ん!
はぁと溜息を付くとリモニーザは、その恨みが成就すれば何もかもが迷宮ごと消えるであろうこと、それでレシピが失われればどれだけ自分に迷惑がかかるのかということを力説する。
「いやあー。本当手間かけさせちゃった。んーでもさ」
「うん、来た理由はわかったけど」
「なによ?」
「「どうやってここに?」」
スウィ~ト達の声が重なる。
「あ。うん…それはまあ」
そこはこちらもよくわからない逆恨みを利用したのだが……。
「まあ、こっちはこっちの伝手のようなものがあるのよ」
詳しく言う事もないと話題を切って捨てる。
「じゃあ…脱出もその伝手、使う?」
「うぐ…」
じーっとアイシスの瞳がリモニーザに注がれる。期待に満ち満ちた光を湛えて。
「不可能。異移動手段アイテム所持者は対立、のち離脱」
こちらは凪いだ海のように淡々と事実のみを告げるシロイロの言葉である。
「ダメじゃん! ていうか入ってから対立したの!? 何があったのそれ!?」
「そもそも向こうが人知れず私を消そうとでも企てたのよ! デート先で考えなしに喧嘩別れしたカップルの話に食いつく女子みたいな顔はやめなさいな!」
「結局そっちも恨みをかってこの状況じゃ、人のことどうこう言えないじゃないかーっ」
「そもそも、あなたがあっさり殺されてレシピを渡していればよかったんですっ」
「そこまで話を戻したら結局堂々巡りでしょー(>_<)」
「最初っからおかしいのですから仕方ありませんでしょうっ(`・д・´)」
らーっらっ!!
ヒートアップする二人の間に割り込んだのはざらめだった。
ぴょこんと跳ねるともふっとしたマシュマロが双方の口にぽぽんとど真ん中ストライク!
面食らう二人に、子供を叱る母親のように、愛情が見え隠れする怒りん坊の顔をつくってみせている。
らーらっらら♪
「喧嘩、ダメ。仲良く…かな?」
アイシスの言葉に大きくざらめが頷く。
スウィ~ト達も念を押されなくとも、その意図は十分に感じていた。
「とりあえず脱出を第一に考えようか」
「まあ、情報交換くらいは済ませておきましょうか」
二人は顔を見合わせると、自然と近づいていた距離を離して車座になる。
迷宮の核となったであろう木づちのこと。
大魔王の関りは濁しながらも、強大な魔力によって創られたありえたかもしれないシノバスのこと。
明確な意図をもってスウィ~トを狙うシノバスの怨霊のこと。
専用に調整された空間干渉が必要なほどの隔絶があること。
リモニーザの敵であろうジョイフーと残してきたイズナのこと。
体調や装備品、現状の確認。
思ったよりも時間を費やして、一区切りを付けるとリモニーザは深くため息を吐いた。
「最初にやる事は決まってしまったわね」
不本意という文字を顔で表現したらこうなるのだろうかといった陰りを宿して立ち上がる。
「二人そろってまずは仮眠。見張ってあげるから…シノバスを挑発する作戦をとるにしても、ボロボロすぎるわ」
シロイロ、警戒態勢でお願いするわねと慣れた風に話しかけるリモニーザは、スウィ~ト達を再び見る様子もない。
「どうす……」
る?と言葉を続けようとしたアイシスは、ふっと息を漏らす。
スウィ~トは荷物から野宿にも用いるマントを引っ張り出し始めていた。
「ここで疑うスタンスで行くなら多分もう死ぬまで出れない気がするからさ♪」
思いっきり寝てやるさと頭から被って太っちょミノムシの如くなるドワ男。
「おいで、ざらめ」
それに倣ってざらめを抱き留めてアイシスも深い眠りを求める事にする。
冒険者は時に大胆に、博打だって必要だ。それにたぶん分の悪い賭けじゃない。
──きっとこれだって“冒険者の縁”ですから──
懐かしい少年の声が聞こえた気がしてアイシスは微睡に微笑むのだった。