DQXの二次創作小説。漫画蒼天のソウラ要素もあります。
独自解釈等が含まれます。苦手な方は読み進めないでね。
登場キャラクターの言動や設定も私の妄想です。
1話は2019/06/23の日誌からです。
◆◆85話 お日さま◆◆
まさかの定住宣言に左右からやいのやいのと飛んでくる言葉をまあまあとスウィ~トは宥める。
ここまではあくまでボクの考えの表明だからと。
「アイシスやリモ、シロイノの考えだって聞かせてもらうよ。でもまずはりっちゃんの話を聞かなきゃね!」
てらりと光るチェリーのような赤い瞳に期待を宿して、理想の竜を真っ直ぐに見つめる。
「さしあたって、キミ自身の本来の名前から聞かせて欲しいな♪」
自分で勝手に呼び名を付けたのは会話を続けるための一手だった。
それが叶った今、最初に聞くべきことは決まっている。
それが礼儀であり、本当の第一歩だ。
「我が名か……」
竜は天を仰ぎ見るとぽつりぽつりと、その出自を語り始めた。
竜が恐れられず。
竜が敬われず。
竜が求められない。
ただ、ただひたすらに竜が憎悪された時代に生まれた竜と取り残された竜族の話だった。
大きく永く続いた戦があった。
その果てに竜族はアストルティアの大地から消え失せた。
僅かに取り残された人々と、敵対者としての竜族と竜のおぞましいイメージを残して。
「卵の我を抱いて逃げ、ひっそりと隠遁者として生を終えた竜族の男が付けた名がソルレだった」
その後の永劫に近い理想の竜の時間からすれば、瞬きにも満たない刹那を共有した男。
彼が生まれた幼い竜にお日さまの名を与えたのは、彼にとっての確かな温もりだったからなのか。
冒険者達はいつしかその昔語りに聞き入っていた。
アストルティアに今も残る天より降りて諍いを鎮める竜族の伝承が覆されるようなその言葉に。
想像もつかない程の時の流れの重みに。
それほどの存在と言葉を交わしている奇跡に。
「我は悔しかったのだ。かつては恐れと同時に敬いが竜族にも竜にも向けられていたと聞かされて。我はそういう存在に成れるはずなのだと心に決めたのだ」
そうやってソルレが理想の竜へと変わっていった事実は、魔族のリモにすら一筋の汗を流させる。
ソルレはもはや竜の形をした概念に近い。戦えば確かに負けていたのだと実感する。
「じゃあ、その竜族の人が作ってくれたの? 豆大福を」
一方スウィ~トの本題はあくまでソルレ個人の想い出や趣味嗜好に集約していく。
「いいや」
ソルレは首を振る。それは魔法で保存されたとっておきの品だった。
殻を破り一年を過ごした頃、祝いだと一人と一匹で食べた最初で最後の菓子だった。
「うぅ。豆大福……作ってあげたくなってきた」
すっかり感情移入が進んだのかアイシスが涙ぐみながら呟いている。
「それもいいね! それにボク達の目標のスウィーツも足して。数千年越し? とにかく超ドひさびさのスウィーツメモリー作りしちゃおうよソルレ!」
差し出されるドワーフの短く太い腕。あまりに外見の異なるその腕に竜族のそれが重なって見えた。
「我は……貴様達だけの理想の竜とはなりえんぞ」
「全然かまわないよ」
「そうか。ならばよい」
ソルレは静かに前足を持ち上げると自らの爪の先を、そっとスウィ~トに掴ませたのだった。
そこからさらに長い話し合いがあった。
パーティメンバーの意見もあれこれと出た。
様々な思いを持って理想の竜に相対する者達の事も考える必要があった。
もし本当に勇者姫が来たらどうなるのだとか。
家を建てるべきなのか?足繁く通うべきなのか?とか。
日が暮れてなお、語り合う声は夜の静寂にとめどなく吸い込まれていった。