DQ10と蒼天のソウラ関連の二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動についても私の妄想であり公認ではありません。
◆◆◆それぞれ(3)◆◆◆
「ぬー。ないのであーる。あれは確かスケッチがどこかにあった筈なのであるが~」
ミカゴロウ達が尋ねると死霊博士ゾフィーヌは自室のあちこちをひっくり返しているところであった。
「ゾフィーヌ様」
「ぬおおぃ!? ミカゴロウもう来たのであるか!」
「失礼を。お声がけしたのですが一向に気づいてただけませんので……」
「少しだけ待つのである。確かえーっと、そう、前にこの辺りに放り投げた気がするのである!」
ゾフィーヌは崩れまくって積層した資料の中へと勢い良く手を突っ込んだ。
むにゅん。
しかしその手が掴んだのは柔らかく弾力のある丸みを帯びたなにかだ。
「なんであるか?」
「きゃっ! おじ様のえっちー!」
可愛らしい声を上げながら、紙束の山から起き上がったのは少女だった。
雪の白さを宿したロングヘアに一輪の大きな漆黒の花飾りが映える。
メイド服とドレスを兼ね備えたような衣装に、包帯ともリボンともいえる飾りがあちこちにあしらわれている。
そんな可憐な少女の胸元を掴んだらしいゾフィーヌは謝罪するという事もなく、はてと首をかしげる。
「むぅ。どなたであったか?」
「ま、また忘れられました!」
少女は顔色が悪くなるほど、いや元々生者としての色合いを失った顔のままショックを受ける。
「うう、シグナルです。享年18歳、ゾンビ僧侶として……は何もしてませんけど、おじ様の身の回りのお世話をがんばってるじゃないですか。三日くらい埋もれちゃったからって忘れないでください~」
「……そうであったような、そうでなかったような?」
「自分でゾンビにしたんですから、ちゃんと覚えててくださいませ。って、は!? お客様が!?」
「あ、いえお構いなく」
勢いのままに噛み合わないやり取りをする二人にあっけに取られたミカゴロウに気づいて、シグナルはわたわたと資料の山から脱出する。
「仕事のために話を聞きに来ただけですので」
「お仕事でございますか……」
「そうだったのである! 白夜の宝珠のスケッチを探さねば」
「あのスケッチでしたら、こちらの棚にありますけれども」
主の言葉を聞くとシグナルは目的の物を取り出してくる。
「おお! では、あれとそれとこれと……」
「ええ、はい。それはこちらで、これも必要ですか?」
最初の気の抜けたイメージはどこへやら、ゾフィーヌが探すものをシグナルは的確に取り揃えていく。
それらを元にゾフィーヌはカロリーンヌに奪われた品々をミカゴロウ達に伝える事ができてホクホク顔だ。
一方でミカゴロウは気が引き締まる思いだった。
広範囲の死霊を活性化させる常闇の宝珠と対をなす小人数を強く長く維持させる白夜の宝珠。
高名な天地雷鳴士を由来とした高い魔力を秘めた杖。
伝説のデスマスターが秘匿した三種のアクセサリーの一つとされる指輪。
死霊化した肉体の修復に関する新理論。
歴史上の有用な死体のピックアップリスト。などなどなど。
「エストリス様のご判断も納得だ。やすやすと放置するわけにはいかものばかりです」
並の冒険者なら一財産が築けるレベルの品々である。
「そうなのである。なのに吾輩が探しに行くのはやめろとエストリスが言うのである。子供ではないのであるがなぁ」
ゾフィーヌはそうぼやくが、ミカゴロウもシグナルもそれに完全に同意する事は出来ない。
彼は良い面でも悪い面でも子供っぽさを持ち合わせているのだ。迷子になっても不思議ではない。
「私達が取り返してまいりますよ」
「うーむ。せめて吾輩にも手下が居ればよいのであるが……」
聞く人に安心を与えるような声を受けてゾフィーヌが呟くと、私、私、私と自らを指さしアピールするものが一人。
もちろんシグナルである。
「私がおじ様のために頑張ってきますよ」
「おお、それはいいのである! これで吾輩の顔もたつのであ~る」
「はい! お任せくださいませ」
え、いや。勝手に同行を決められてもと内心ミカゴロウは思ったが、困り顔でエストリス様にお伺いを立てようものなら……喜んで許可を出すだろう。
予想ではなく確信として主の顔が思い浮かんだ時点で選択肢は消滅した。
タラララッタッタターン♪
シグナルが仲間に加わった。