蒼天のソウラを含む二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動は私の妄想であり公認ではありません。
◆◆剛撃アイシス参号◆◆
一方でアイシス参号は豪快に斧を振るう。鎧で守られた身体はそう易々と致命打を受けない。
ワッサンの飛び蹴りをあえて受け止め、着地の瞬間に振り下ろしを重ねていく。
重量級の武器に速度が加わりシンプルに一撃粉砕の威力を生み出す剛の戦闘技。
「とはいえ、このレベルの重撃ならばっ」
本当に地に足が触れたのかというほどの刹那で、ワッサンのずんぐりとした体が刃の分厚さ分横にずれる。
薙ぎ払うように斧を大回転させる無双の動きに切り替えるアイシス参号の力技に逆らわす、刃の側面に身体を預けて水平になる動きを利用。
くるんと一回転して着地すると二枚の扇を広げてこちらも超回転。
鈍色の回転と桜色の回転がぶつかり合って弾き合う。
「純正の扇技ピンクタイフーン。うむ、キレは落ちていないが……魅せが足りなかったか」
「こちらのパワーに拮抗した?」
互いに一片の不満を口にして構えなおす両者。
二組が膠着する様子を窺うカロリーンヌは計算を巡らせる。
まずは動きがわかりやすい斧使いを倒せば二人がかりで棍使いを撃退できる。
「ワッサン、そっちから」
「分かっている」
ドワーフが扇をひらりと動かすと、濃縮された空気中の魔力がカロリーンヌの身に集う。
魔道を修める彼女にとってそれは強力な呪文のブースト効果に他ならない。
「食らうにゃぁ!」
渾身の呪炎呪文が放たれるのをアイシス参号はモノアイで捉える。
推測ダメージはギリギリ許容範囲だ。ならば彼女を補佐して攻撃の手が止まったドワーフを追い込む事を優先する。
無言のまま冷徹に、そしてこれまでで一番素早く振り下ろす刃にドワーフは笑う。
「こういうダメ押しもあるんだよね」
風に吹かれた綿毛のように両の扇から幻の花弁が舞うとアイシス参号の鎧に溶け込んで華開く。
迫る怪火の予測ダメージ値が急激に上昇する。
いや違う。こちらの魔力耐久値が急激に引き下げられたのだ。
扇使いはその体術、技術を太古の舞踊儀式と結びつけ、魔法のように敵を翻弄する。
鎧の青に炎が爆ぜる。衝撃に体の軸がずれ、飛び上がったドワーフの蹴りが間髪入れずに正確に顎を捉える。
たまらずアイシス参号は仰け反り後ろに倒れ……なかった。
ガシャガシャガシャンと連続的な金属音を響かせながら、腰から足首辺りまで垂れた板金の連なりが、二対の後ろ脚へと変形して、元々あった脚が大きく膝を曲げて四脚歩行へと移行する。
「なん!?」
さすがに面食らったワッサンが半月型の目を見開くと、手の平中央に露出した発射孔が鮮明に映る。
「痛恨必中衝撃砲、発射します」
アイシス参号の腕部から耳をつんざく爆発音が響き、発生した衝撃が小さな孔に殺到する。
景色が、空気が歪められていくのをスローモーションで捉えながら、自分の体の反応は鎖に縛り付けられたかのように緩慢で、ワッサンは背筋に冷たい物を感じる。
「障害排除……失敗」
だが回避不能の必殺技を発射した改造キラーマシンは、眼前の状況をそのように結論付けた。
なぜなら乱入者が全てを受け止めてしまったのだから……。