慣れない剣技や、残っていた変身魔力により疲労が限界を超えたシルデレラは、近くの木陰で少し休むことにしました。
その間、まだあまりなにも知らない互いのことについて色々と話していたのです。
王子「そうか。シルデレラは一人で家族を支えているんだね。」
シルデレラ「ええ。」
王子「辛くはないのかい?」
シルデレラ「頭のおかしい姉たちだけど、一緒にいるとやっぱり楽しいのよ。だから、たくさん頑張れちゃうの。」
王子「武闘会の時といい、きみは強くて優しいんだね。」
シルデレラ「それほどでもないわよ。王子こそ、ご家族が色々と大変みたいね。」
王子「王である父は、戦やその準備で毎日忙しいんだ。だから・・・」
シルデレラ「戦いを見るのも嫌になってしまったのね。」
王子「うん・・・でも!シルデレラ。きみはその行動で教えてくれた。守るための戦いもあるんだって!」
シルデレラ「そんなの今回きりよ。あの意味不明な魔法にかけられた力のせいだわ。普段はからっきしよ。」
王子「あはははは!そうか。」
シルデレラ「そろそろ暗くなる頃だわ。休ませてくれてありがとう。いきましょう?」
王子「ああ、ずいぶんと長く話してしまったんだね。」
シルデレラが腰をあげたその時でした。
シルデレラ「今日は不意打ちに縁があるわね。」
オーク「ぐへへへ!よく気づいたじゃねえかぁ!俺様のナワバリの子分をよくもやってくれたなぁ!」
どうやら先ほど剣技で退けたスライムナイトは、このオークの手下だった様子。敵討ちにと鼻息を荒くしたオークが襲いかかってきたのです。
王子「シルデレラ!!」
シルデレラ「下がってなさい!皮肉だけどもう少し魔法の残りを頼りに・・・・うぅっ!!」
どうやらまだ回復しきっていない様子。シルデレラは再び膝をついてしまいます。
王子「シルデレラ!大丈夫!?」
シルデレラ「王子は逃げて!犠牲は少ないほうがいいわ!」
王子「っ!!!」
王子様はシルデレラをやらせまいと、オークの前へと飛び出しました。
シルデレラ「ちょっと!なにしてるのよ!!」
王子「犠牲は少なくだって?ふざけるな!」
シルデレラ「王子・・・。」
王子「数じゃないだろう!犠牲なんか無いほうがいいに決まってるじゃないかっ!!」
王子「それに、今はきみならなおさらだ!」
ただでさえ父である王の元で戦による被害、犠牲を見てきた王子様にとって、自分が惚れ込んだ女性が窮地に立たされたこの状況を見過ごせるはずがありませんでした。