(承前)
あのね、提案広場で、いちばんうーんと思ったのは、「20億ゴールドなんて、一瞬で達成されるにきまっているではないか。運営はそんなこともわからなかったのか」ということを言い捨てている人がいたこと。
そんなことは、やる前からわからないと思います。少なくとも、私にはわからない。
不特定多数の人間が、どういうリアクションを示すかなんて、やってみて確かめるしかない。そんなことが前もってわかるのはハリ・セルダンだけです(注:小説に出てくる架空の超人です)。一千万ゴールドずつじわじわ募金が増えていくのか、一発でマックス金額まで入るのかなんて、前もって知りようがない。次回以降は、この結果を見て、もうちょっとちがう加減が取られるかもしれないが、少なくとも初回は「やってみないとわからない」が正しい。
わたしは、こういう「そんなこともわからなかったのか」系の文句は、結果を見てから安全側に身を置いて言い放っているという意味で、「人生のカンニング」だと思います。うっかり人生のカンニングをしない、というのは、本当に大切なことだ。
「上限までいったら、締め切る」ということも、本当に大事だ。際限なくお金を投入できてしまうのは絶対的にまずい。
これはたぶん、「超富裕層から超高額を回収するためのイベント」なので、「そうではない人々にはお金を入れてほしくない」というはっきりした意図があったはずだ。
このイベントは、「募金額一位の人の募金のみが没収され、それ以外の二位以降の募金は返却される」という大前提がある。
おそらく運営側が想定したいちばんまずい事態は、
「上限もわからず、締め切りもないので、別に超富裕層でもないプレイヤーがまず最初に全財産をつっこみ、それ以降も、イベント期間中ずっと必死でお金を稼いでは、その稼ぎを投入し続ける。後で返ってくるので平気でじゃぶじゃぶ投入する」
という人が出てくることだろう。
そういう人が、多数出てくることが、いちばん恐ろしかったはずだ。
なぜそれが恐ろしいかといえば、もちろん、イベント終了後の燃え尽き症候群みたいなものも危惧される。
けど、それ以上にやばいのは、そんな人がたくさんいた場合、「アストルティアの世界に存在するお金が、一時的に大量に減る」ことになる。
しかもその場合、流動性の高いお金が減るのだから影響が甚大だ。
ようするに、超富裕層がためこんでいるお金というのは、もともと、塩漬けになって固定されているお金だろう。だから、それがごそっと減っても、「もともと動かないお金が、別の動かない形に変わる」だけなので、経済への影響は少ない。
でも、超富裕層でもない一般プレイヤーがつぎこむ大金というのは、どうだろう。
もしふくびきランドにゴソっとつっこまれなかったら、それは、バザー等で装備やコインを買うのに使われていた可能性が高いお金だ。
そういう流動性の高いお金が、イベント開始から、終了して寄付金が返却されるまでの間、まったく凍結されて動かなくなる。経済への影響は甚大だ。ふくびきランドが寄付をつのったら、アストルティアの経済が混乱したというわけで、ふくぶきランドひどい国だな。そうなっては絶対いけなかった。
もちろん、やってみたらそうはならなかったかもしれない。しかし、そうなる可能性があるなら、やらないことが安全側である。何度も言うけど、初めての試みなのだし、不特定多数の人々がどういうリアクションを示すかなんて架空の超人でもなきゃわからないことだ。まあ、提案広場やDQ10系ブログのコメント欄には野生のハリ・セルダンいっぱいいるみたいだけど……。
(ちょっと皮肉を言いたかった)
ふくびきランドイベントは二回目以降が予定されているようで(あたりまえだね)、おそらく1回目で見られたユーザーのリアクションを見て、なんらかの調整ははかられるとは思います。でもそれは、「一回目がまずかったから、二回目は反省して直した」とか、そういうわけではぜんぜんないでしょう。私は、このイベントを見て、「目的が明確で、リスクが検討されており、その対策が考えられていて、安全側に倒れるように作ってある」、つまりは、「よく考えられている」という印象が全的だ。頭いい。
そう、頭いいといえば、イベント終了後の、「ボクあんな人のお妃になりたいなあ」のセリフには、ニヤリとした。イベント終了して、結果が確定した後に、トロフィーの高さをほぼノーコストで10倍くらいにしてきたわけだ。
このイベントは、世界に存在するゴールドを回収するためのイベントなのだから、気前よく身銭を切った一位のプレイヤーさんは、アストルティア経済にはっきりとした貢献をしたことになる。トロフィーはどれだけ高くてもよい。(了)