むかしむかし…まだドラテンがバージョン2の時代…。
これはグレン住宅街に住んでいたエルフ女の裁縫職人の物語…。
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『これを使えばお金がみるみる貯まる!金運アップ!黄金のさいほう針!』
「なにこれ?あっほらし…」
私はつい口に出していた。
こんなくだらない商売考えつくなんて、ある意味才能だなぁ。と私は思った。
それも価格は200万G。
奇跡のさいほう針★★★ですら32万Gで買えるのに、ほんとばかみたい…。
私がその場を去ろうとした時、隣にある別のポップが視界に入った。
『あの大人気装備の退魔だって簡単に縫える!その評判は本物です!』
…はー、ばかばかしい。もういこ。
数日後
いつも通りに水のはごろも下を縫っていると、珍しくお誘いの声がかかった。
『こんこん〜。ピラミッド1〜7行かない?』
ちょっと迷ったけど、私はOK!を返して僧侶になり、自分で縫った自慢の水のはごろも一式に着替えた。もちろん耐性錬金は万全だ。
ピラミッドみたいな新しいコンテンツには消極的だったけど、別に戦闘は嫌いじゃなかった。
難しい課題に協力して挑むということは楽しく思えたし、自分で作った装備を試す絶好の機会でもあったから。
私は意気揚々と集合場所に赴いた。
そこに待っていたのは…
全員退魔の装束で身を包み、明るい表情で私を出迎える三人だった。
魔1「よろしく」
魔2「おいっすw」
賢 「こんにちは〜よろしくお願いします!」
私「よ、よろしくお願いします」
僧侶という最後衛ポジションで戦っているので、戦闘中も三人の姿はイヤでも目に付く。
魔法使いのヒトも賢者のヒトも、退魔を身にまとったその一挙手一投足はひときわ強い輝きを放ち、とても生き生きとしてるように見えた。
別に三人は私の装備を馬鹿にしたり、けなしたりしなかった。
それどころか、全員で和気あいあいとチャットを交えながら戦ってたくらいだ。
でも、私はどうしても
『三人は心の内では私の装備を馬鹿にしてるんじゃないか』
という思考が頭から離れなかった。
無事、第七の霊廟までを終えて、笑顔で解散して帰宅し、床に就いた後も変な想像ばかりが頭に浮かぶ…。
『水のはごろもwww』
『僧侶さんww今バージョンいくつか知ってます?www』
『いいですか僧侶さん。退魔セットには封印ガード20%がつくんですよ。これはすごい数値で指輪とセットで100になるんです。水の羽衣のセット効果は時代遅れで他にも守備力が云々…』
こういうのを被害妄想って言うんだろうか。
あーあー!ホント自分が情けなくなる!
自己嫌悪モードのまま、私は眠りについた。
その翌日…
私は今、ワクワクしている。
けれども不安でたまらない。
すごく複雑な心境だった。
自宅の作業部屋にいる私の目の前に置かれているのは…
一着分の退魔の装束上の材料と…
ピカピカの“黄金のさいほう針”だった。
ー 続く ー