むかしむかし…まだドラテンがバージョン2の時代…。
これはグレン住宅街に住んでいたエルフ女の裁縫職人の物語…。
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目の前に置かれた一つ分の退魔の装束上の材料。
そして手に持った“黄金のさいほう針”。
結局、湧きあがる好奇心を抑え切ることができずに大枚をはたいて買ってしまった。
我ながらほんとバカなことをした…。
不安で不安でたまらない。けれども、それと同じくらいワクワクしていた。
よもやよもや…はやる気持ちを抑えながら、裁縫設備の前に立っていた。
縫い始めてすぐにこの針の効果を実感できた。
かいしんのてごたえ!かいしんのてごたえ!かいしんのてごたえ!
開始早々立て続けに会心。
よし…このまま…と思ったが、途中で縫い方を間違えて集中力がだいぶ厳しくなってしまった。
114 47 105
90 60 92
103 44 117
残り集中力は16。ここで左下の103にねらいぬいを成功させれば★★★になる。
成功率は多分30〜40%。
舞台は整った。見せてもらおうじゃない。この針の真の実力を…!
ふー… えいやっ!
渾身の力を込めてねらいぬいを放った。
(チュイーン!!)
それはまさしく、かいしんのてごたえ!だった。
今まで感じたことのない強烈な手応えに私はすっかり夢心地になった。
ああ…私の選択は間違っていなかった…。
この針に出会えて本当によかった…。
これからの人生はきっともっと明るくなるはず…。
明日から生まれ変わった気分で頑張ってみよう…!
…その直後に走った左手人差し指の激痛に、私は我に返った。
いったっ!いっ!つぅうううう!
反射的に針を指から引き抜いて台に叩きつけた。
わああああああああああああああああああああ!
ドクドクとしたたる鮮血。
手応えがあるはずだった。私が縫ったのは生地ではなく、自分の左手の人差し指だった。
タオルで抑えてじっと止血している時、私がみたのは…
叩きつけた黄金の針がど真ん中に突き刺さり、血を浴びて汚れてしまった退魔の装束上★だった。
ー 続く ー