パドレア邸の台所でマローネは侍女と、美味しいと評判の手作りクッキーを焼く準備をしている最中だったが、考え事をしていた。
王宮の広間でドミネウス王が娘のメレアーデに怒鳴りつけている場に居合わせてしまったのだ。
ドミネウス王「おまえはわしが結婚しろと命じた男の妻になりその男に妻として尽くすことだけを考えておけばいいのだ。それが王女の役目と責任だ。王女としての気品と分別をわきまえろ!おまえの意思などだれも聞いてはおらぬわ」
メレアーデ「・・・・・・・」
にがにがしそうにそれだけ言うと、ドミネウス王は玉座の間に向かった。
メレアーデはマローネに気づくと、舌をぺろっと出して苦笑いをした。
「奥様、オーブンが温まりましたよ。クッキーお焼きにならないんですか?」と侍女の声でマローネはわれに返った。
侍女A「もうじき、クオードさんとメレアーデさんがお茶しに来られる時間ですよ!」
マローネ「そうね。もう急がないとね。あの子たちに焼きたてを食べてもらわないとね」
侍女B「奥様~~。〇〇〇〇(主人公)さまのミルクのお時間ですよ」
マローネ「ああそうだったわ。ごめんなさい、一番大事なことをわすれていたわ。あなた、このクッキーをオーブンから18分後に取り出してくださいね」
てきぱきとクッキーの種をならべた天板をオーブンに入れてしまうと、マローネは侍女Aにそうたのんで、小走りに自分の赤ん坊のゆりかごが置いてある侍女Bのいる部屋に向かった。
「おぎゃーおぎゃー」赤ん坊は元気にお腹が空いたと泣いていた。
マローネはドレスを肩肌脱いで豊かな乳房をあらわにすると、自分の赤ん坊に授乳し始めた。
侍女B「奥様もすっかり〇〇〇〇(主人公)様への授乳がなれられましたね」
赤ん坊をいとおしそうに見つめながらマローネは明るく答えた
「そうかしら?うれしいわ」
侍女Cが声を殺していった
「クオードさんとメレアーデさんがいらっしゃいましたよ」
そのうしろからクオードとメレアーデが笑顔で入ってきた。
「おばさま、〇〇〇〇(主人公)は元気そうね」とメレアーデ
クオードは礼儀正しく後ろを向いたまま、「おばさま、こんにちはお茶にお招きありがとうごます」と挨拶をした。
メレアーデが、「あなたも将来結婚したら赤ちゃんの世話しなきゃいけないんだからよく見ときなさい」とクオードに言うが、クオードは恥ずかしそうに前を向こうとはしない。
授乳も終わり、赤ちゃんの世話になれている侍女Bがマローネから〇〇〇〇を受け取って寝かしつけてくれた。
侍女Bはゆりかごに寝かせてそばにつき、
隣の部屋で、マローネとクオードとメレアーデは焼きたてのクッキーでお茶会をはじめた。マローネは美味しいハーブティを入れる名人でもあった。自分と甥と姪の分と侍女たちの分のハーブティを入れると、クオードにねだられてパドレとファラスの若い頃の武勇伝を語り始めた。
「もう幾度も聞いた同じ話なのに、そんなに聞きたいの?」
クオード「あははは、パドレおじさんの話は幾度聞いてもわくわくするんだよ、おばさま。それにしても、パドレおじさんの武勇伝には必ずファラスも出てくるんだね」
マローネ「そりゃ、ファラスはあの人の若いころからの従者でファラスの家系はこの家に代々仕えてきた従者ですものね」
それからマローネは、甥と姪が幼いころから幾度も聞いたパドレの武勇伝の話をするのだった。
そのときマローネはメレアーデの表情に気づいた。
ファラスの話になると顔を赤らめてマローネの話にうっとりと集中して聞いているのだ。
マローネが少し疲れてハーブティで喉を潤すと、メレアーデは遠くを見るような目で言った
「ファラスはまだ帰ってこないのかしら・・・・・」
クオードが怪訝な顔をして言った。
「なんだよ、姉さん、藪から棒に・・・・」
メレアーデはいきなり顔を赤らめてそそくさと言った
「な、なんでもないわ。気にしないで」
マローネはメレアーデのそんな様子をいとおしく思った。