暮れ方の山道。
ふわりと揺らいだ薄桃色の花びらの優美な舞に誘われる
辺りを見渡せばああ、やはり君なんだね。
優美に舞う花びらの舞の先に
ほの白い柔らかな花弁の可憐な花を見つけることができた。
その細い枝先に着いた綻んだ花弁に手を伸ばす。
其れを手折らないように、この美しさに惹かれ、我を失くしてしまわないように。
「君はこの世界を何と例えるの?
この世界での僕は、我等はどうあるべきなのかな。」きっとこの答えは、この問いは、永遠に導き出す事が出来ないのだろう。
今も、此れからも、此れまでも。
さあ、と揺らぐ風が宵の闇が空を濃い夜色へと混ぜ合わせて行く。
「ああ、夜が目覚めたんだね、そろそろ帰らないと」
木々を、生命を夜の眠りへと誘うその静けさに
舞う花びらに導かれまた歩を進める。
「もう、そんなに急かさ無くてもちゃんと帰るよ。」
小さく呟き目を細める。
僕の、僕等の帰る場所は、我等を認められる場所は其処にしか無いのだから。
僕は、僕達は我等は常世の常であるのだから……
多くのものを失った今、
世界を保つ為にまだ、この世界に留まる事となるだろう。
山桜、紫水晶の朝に、黒の夜に咲く
久遠の過去を見つめ続ける気高く、優美で静穏な花。……であると僕は詠む。