踏み込みすぎは、恐怖の現れ
勇敢さの取り違えが隙を作る。心の弱さを持っているうちは危険だな。
わたしの話しは難しいかな?
・・・・・ではもっとわかりやすくいこう。
昔、このゴーレム山賊団におまえくらいの若者がおったんじゃ
その若者ときたら、右も左もわからぬ田舎者のくせに、鼻っ柱だけは誰よりも強くてな・・・・・
ブラッドの教えにも耳を貸さず、ひとりで斬り込み隊長を気取っておった。
そんなある日、洞窟に魔物が出た
例によって真っ先に飛び出して行こうとする若者に、団長ブラッドが聞いたんじゃ
「おまえは本当に強い心を持っているのか?」
若者は何のことを言われているかもわからずうなずき
ブラッドをふりきって洞窟に入った。
洞窟の中には、今まで見たこともないほど凶悪な魔物がおったわい。
魔物に睨まれると、若者は動けなくなった。
あれが本当の¨殺気¨というものなんじゃなぁ
若者が死の恐怖を感じて瞼を閉じた時、ブラッドが駆けつけた。
「しっかり見てろ!」
ブラッドは叫んだわい。そして、若者の目の前で魔物に斬りかかった。
魔物もさる者、ブラッドの胸に牙をたてた。
両者はがっぷりと組み合い、一歩も譲らぬ
ブラッドは胸から血をぼたぼた流しながら、すでに何度も若者に伝えてきた教えを
もう一度告げた
「大事なのは間合い、そして退かぬ心だ」と
・・・・・さすがの馬鹿も、団長が命を張って教えてくれたことは理解できたという話じゃ。
ブラッドの胸には一生、それこそ永遠に消えぬ傷がある。
それを¨借り¨と呼ぶな、とやつは言った。どうせなら¨恩¨にしてくれとな
だから、わたしはやつに恩返しせねばならん。
わたしの一生くらいじゃ返しきれんかもしれんが、生涯¨アストルティアのゴーレム山賊団¨はわたしが守り抜こう。
遥か彼方、アクラル大陸のゴーレム山賊団団長 ブラッド・ボアルより受け継ぎし
アストルティアゴーレム山賊団団長 ミシェル