人生にはふたつの選択肢がある。
その状況を受け入れるのか、若しくは状況を変えるための責任を受け入れるのか。
私の名はあずきあらい。
自称サソリの教官として切磋琢磨を続ける毎日。
鏡の前で安い赤花の紅マスクを付けながら自らに問いかける。
あの時に比べたら、今の私は責任を全うできているだろうか?
・・・
私は自称ドラゴン見習い員だった。ドラゴンに対する知識は低く、経験も浅い。そのくせ自信だけはある。物事を深く考えず、己の常識が世間一般の常識だと勘違いしている。不測の事態など起ころうものか、99%起こんないよそんなものと決めつけているのだ。
事実、大凡の心配事の9割は起こらない。これは私の経験則から導き出した結論である。残りの1割をどう考えるか、教官としての資質と腕前はここにあるのかもしれない。
ドラゴン等朝飯前だ、サポートでも行けるもの。
カードの期限が押し迫った春の日。穏やかな陽気に誘われて軽い気持ちで人を誘う。
まだサソリ請負人になる前のじんじんさん。
そしてドラゴン初のおゆこさんである。
未経験で不安一杯の女性に対して私は言った。戦士で刃砕きだけしてくれたらよいよ、あとは適当にー。okと彼女からの返事。
サポ3が適当に削ってくれるいつもの戦い。今日は人間が3人もいる、すぐ終わるね、間違いない。
しかし戦いが始まるとその考えが一変する。
おかしい、バタバタと人が死ぬ。
刃入ってないな、これ。
ミスったのかな、リキャ待とう。
あれ、おゆさん渾身切りしかしてないな。
あれ、また渾身してる…。
まさかの1%の不測の事態が発生した。
おゆこは刃砕きの無い戦士だった。
私は震えた。
そう、あの時の私は刃砕きの無い戦士を想定できない見習い員だったのだ。
春の刃砕き事件の後、私は自称ドラゴン見習い員を辞めた。もうドラゴンに誘われても知識をひけらかさない一般人となった。
時が流れ、我が一門の一人として日々精進するおゆこの姿がある。
私は確認する。
大丈夫。サソリとの戦いでほぼ必須の毒と即死の耐性は今日も忘れてない。
大丈夫。
そうして私は紅のマントを羽織るのであった。
この日記は下記の作品のスピンオフ企画となっております。是非本編をお楽しみください。こんな日記より全然面白いから見てね。
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/75089955499/view/6303232/