シーンの冒険日誌

どうやら最後の相手はバズズらしい。
なんかひないちごさんでない魚の人とか
ドワの人とかがしきりに爆裂を期待しているご様子だ。
まぁ…悪霊でなきゃ別に大丈夫だろ。
サブ回復ってことで攻撃に入ってもらっていいんじゃないか。
「お許し」とやらを出すことにした。



そう言った私に明らかに間違いがあったことを後に思い知ることになった。
なぜ「爆裂」についてのみ許可としなかったのだろうか…と。



バズズ戦も中盤に差し掛かった頃。

（まったく…許可したら思う存分爆裂してくれちゃって。
　猿をそんなに殴りたかったのか。）

私は爆裂している僧侶とかSuper Star（アールは巻き舌）
をまたしても生暖かく見守っていた。

（ま、これで飯を食いにいける。
　報酬がどちらであれ、この長い戦いもこれで終わりだ。…ん？）


１０。

１０ダメージが表示された。
猿相手なら素手爆裂一撃でも２０は出ているはずなのに、１０？
…何か嫌な予感が…。


ごちっ。


なんか石みたいなモノが猿に当たっている。
見るとなんか魚鱗アイドルが石を猿にぶつけている。
あー…あれは、「石つぶて」か。

なるほどなるほど。そりゃあ１０だよな。爆裂してないもんな。１０だよ、うん。
その目新しい技に影響を受けたのか、ネビュラスさんも一緒に石を投げている。
ああ、確かに革新的だよな。猿に石投げる奴なんて私も見たことないしな。
そりゃあそうだ。



…



とにかく落ち着いてくれ私。
アレはなんだよく見ろ。
今私は「石つぶて」と認識したのか？
確かにアレは石つぶてだな。
そうだとも間違いない。そう表示されているしな。

まさか表示バグということはないだろう。
強いて言うなら彼女ら自体がこの戦闘にとってバグという存在であると
例えば戦闘の結果を１秒でも早めるような
所謂ガチ、かつ、ハードコアな方々は認識するかもしれない。

しかしそれは個人の主観におけるレベルでの認識でしかなく、
広い意味でのバグとは言えないだろう。
加えて広い意味でそうだったとしても今は関係ないし論点が異なる。

いやわかった。
それはそうだとして何故石つぶてなのか？

オンラインＲＰＧにおいては、
攻略サイトにおける「ガチ」の戦闘方法というものを
とかく遵守しなければ戦えないという信仰めいたものは確かにある。

だが、それを守らなくても勝てる手段は実際には存在するし、
理解出来ないもの、勝ったことのないもの、勝つイメージを導き出せないものを、
頭ごなしに否定するというのはプレイの幅を狭めてしまうことに他ならない。

ダメージを与えているということは、いつかは「勝てる」はずなのだ。
だから今ここで私がこの行為を頭ごなしに否定するのはよくない。
もしかしたら彼女たちなりに爆裂戦法をより「改善」したのかもしれない。
私にはそれを理解する義務がある。


改めてこの攻撃の有効性を追ってみよう。
まず、そこらへんの石を拾って攻撃するのだから攻撃力なんてものは皆無だろう。
強いて出したとしても３、ぐらいか。どうのつるぎよりは低いはずだ。

加えて石で攻撃するのだから格闘スキルの攻撃力＋７０は使えない。
攻撃力は素手に比べマイナス６７されることになる。
しかしそれでもレベルの高い冒険者なら素の攻撃力を加算すれば
２，３０ダメージはあたえられるだろう。
だからわざわざ石を投げて…石つぶてで戦うメリットはないはずだ。

だが…もしかしたら彼女は後の戦いに
レベルの低い冒険者を引き連れて戦うことを想定したのかもしれない。
そうであればもし素手だろうと石だろうと攻撃してもバズズには１しかあたるまい。
だが、ここで考えてみて欲しい。石つぶては固定ダメージなのだ。
誰が投げても１０は当たることになる。

この効率は通常の１０倍…。
なるほど…１０倍の効率か…。
これなら理解できる。

そうだ、これは普通に石で殴りかかるよりもよほど効率的なのだ。
誰であっても石の性能を固定で引き出せる。
いや、むしろそう考えれば何であれ投げることにより
１０倍のダメージを引き出せるということになる。

なるほど分かった。
そういうことなら話は早い。

結論を言うとだ。
この○○どもをバズズに投げつけてやれば１０００ダメージはいくはずなので
とりあえず投げつけてやるのが一番手っ取り早いということだ。

そのようなスキルの実装を私は望む。
いつか後ろから持ち上げて猿に投げつけてやろう。
そう私はドンペリを飲みながら心に誓ったのだった。


たぶん、酔っていて夢でも見たのだろう。
…今ではそう思う。