バージョン1の頃、アストルティアにうらしまというプレイヤーがいました。
うらしまがゲルト海峡を通りかかると、
キッズどもがリアフレの社畜プレイヤーを問い詰めていました。
「かめさん、そんな装備でラスボスに来られちゃあ困るんだよ」
「ハンパなチャラ坊が軽々しく募集にのっていい場所じゃあないの。わかる?」
「すみません…時間がなくて…」
うらしまはキッズに話しかけます。
「おやおや、野良パーティで文句を言うもんじゃないよ」
「いや、だったら見てくれよこの装備」
カメさんはLV40で、はがねのつるぎとうろこセットの装備をしていました。
錬金もなくパッシブもありませんでした。
「ううむ…少し厳しいか」
「いやちょっとどころじゃねーって。せめて職業装備とかな」
「そこはプラチナだろ。HPパッシブもか」
「錬金込みでアクセサリもだろ。あと斧でまじん連発にしろよ」
キッズの要求がエスカレートしていきます。
見るとカメは涙を流しながらうらしまを見つめています。
うらしまはお金を取り出して子どもたちに言いました。
「聖水代を出すからカメを解放してやってはくれないか?」
「うん、それならいいよ。10000Gね。」
どう見てもそこまで戦っていたようには見えませんでしたが、
うらしまはお金を払いました。
こうしてうらしまは、子どもたちからカメを逃がしてやりました。
それから二、三日たったある日の事、
うらしまが海に出かけて魚を釣っていると、
カメがフレチャで話しかけてきました。
「このあいだは助けていただいて、ありがとうございました」
「今日はどうした。また会社でいじめられたのか?」
「いや…今日はもうドラクエを引退しようと思って挨拶に来たんです」
「そうか…寂しくなるな」
「うらしまさん、ウチの会社に来ませんか?」
「会社?キミの所はブラック企業じゃなかったのかい?ちょっとなあ。」
「いや、最近は業務改善がされて来てるんです。
大丈夫ですよ。うらしまさんの能力ならすぐ上に行けます。
給料もこれだけ出します。」
「今の倍以上じゃないか。なんか凄い待遇がいいな…」
「とにかく今は人手不足ですから」
うらしまはちょっと考えさせて欲しいと言いましたが、
3ヶ月後話がまとまり転職することになりました。