※このお話はフィクションです。
【1】
「ちょっと聞いてよ、派遣先の上司が使えなさすぎなんだけど」
『なになに?』
「曖昧な指示しかしないのに、「君にそんなことをやれとは言ってない」とか言ってくるのよ」
『あー、あるよね。ちゃんと言ってくれればいいのに』
「そう言ったら「一々細かい指示をしないといけないのか?期待通りに働いてくれなくては困る」とか言ってきて…」
『全部丸投げねー、あるよねー』
「口を開けば精神論ばっかりでさー。具体的なこと何も言わないのよねー」
『あるある。それでなんとかなるって本気で思ってるんだからホント困るよね』
「その癖自分は見てるだけでさー。この前もサボってピザポテトとしるこサンドばっか食べてたし」
『うわー、最低』
「あれじゃうるさくない分置物の方がマシかな。その癖契約切れてもすぐ再契約してくるし。なんなんだろ?」
『へええ…ちなみにその上司、なんて指示してくるの?』
「ええと、バッチリがんばれとかガンガンいこうぜとか。あとはずーっと電話で誰かと喋ってるだけ。」
【2】
『景気は相変わらずドン底かい?武器屋の大将よ』
「ドン底?誰がそんなこと言ったんだい?」
『痩せ我慢するなよ。随分前から職人がバザーに良品流すようになってから商売あがったりだろうが』
「…本気でそう思っているのか?」
『どういう意味だ?』
「あんた武器屋の利益と言うのは、武器の生産・販売で成り立っていると思ってるだろう」
『そりゃそうだろう、材料費どうなってるかは知らないが』
「材料はな、ちょっとしたツテがあるから大丈夫なんだ。結構安く手に入れて割と利益は出る。だがそっちは本命じゃあないんだ」
『…?』
「中古品販売だ」
『ああ、昔は大体相場の半額で買い取ってくれてたよな。あれどこで捌いてるのかと』
「新品の値段で他人に売りつけてる」
『えっ』
「見た目をちょちょいと直すとな、誰も気づかない。苦情もきたことないな。あと相場がわからん装備をクズ値で買い叩いたりとかな。これが高く売れるんだわ」
『お前、結構エゲツないな…』
「だがまあ…職人が大発生して商売あがったりになるのは分かってたんだよ。鍛治の神から情報リークがあったからな」
『何やってんだよ神…で?』
「新品はまず売れない、技術も劣る、値段も負ける…ってんでさ。ヤツらが来る前に商売の決め事ってヤツをさ、作らせてもらった」
『ほう』
「まず、買取価格だが大体のモノは10分の1にさせてもらった。買い取っても ふつう には売れないからな」
『まあ、わかる』
「で、装備にはロックをかけさせてもらった。中古品販売で作った装備が売れなくなると困るからな」
『それもまあ…そうだな』
「…でさあ。おかしいと思わないか?」
『なにが?』
「なんで俺らがそんなこと気にするわけ?どの道バザー品には負けるんだぜ?根本的に解決になってないだろ?」
『言われてみれば…』
「ところで、冒険者の装備の処分方法って言うと何がある?」
『そりゃあ、売るか、捨てるか、結晶取り出すかだろう。一番いいのは結晶だな』
「で…なんで結晶取り出したら装備が無くなるわけ?」
『そりゃそういうルールだから…まさかお前!?』
「ちょっと管轄外のアイテム引取もめんどくさくなってきたし、売る奴も多くないんでな?素材屋に話持ちかけたら乗って来てくれたよ…」
『…』
「どうだ?いいスレイプニールかフューリーブレードがあるんだが…ここだけの価格にしておくぞ」
『いや…なんか存在消されそうだからやめとくわ…』
「そうか、まあ欲しくなったらまた来いよ」