※この日誌は事実を元にしたフィクションです
『本日からの我々の”推奨”職業を発表するッ!』
アタッカー
○○○○
○○○○
サポート
△△△△
ヒーラー
◻︎◻︎◻︎◻︎
『以上ッ!各人参考の上敵対勢力の排除に励むように!』
発表の後、昨日得意げな表情をしていた奴らが落胆している
一方で昨日まで沈んでいた奴らが立ち上がってくる
ここはエンドコンテンツ
終わっちまった奴らの吹き溜まり
エンドコンテンツでの戦闘は最前線にいる強者達に制御されている
彼等は
推奨された職業で
推奨された装備を整え
推奨された戦術で動く
推奨というのは建前に過ぎない
低い勝率を補うための事実上の”必須”
中には必須と言い換える者すらいる
実際それも無理はない
襲来毎に冒険者に適応していく魔物
対応のたびに嵩むコスト
常に後手に回る冒険者のスキル不足
王道を外れては勝てない
外れて勝てるのは、例えるなら勇者のいない時代に魔王を倒せるような猛者のみ
弱者が強者のフリをするにはとにかく勝つための道が必要だった
しかし、その結果…
『あなたの改善に必要な資金は最低でも2000万からになります』
「は…はぁ!?ふざけんな!ちゃんと必要耐性は満たしているだろうが!」
『あなた最前線3志望の賢者でしたよね?耐性のほかにHPの底上げが”必須”です。耐性をベルトで補ってる時点でアウトですね。できれば指輪もやめていただけませんかね?あ、その古臭い賢哲捨ててゼルメアで100%耐性ガードを取ってくるのが前提のプランですので、行かれないのでしたらそんなものではすみませんけど』
「仮にカテドラルにして頭HP腕準理論にしても2000はねえだろ!どうなってんだよ!」
『当然最低限ですので準理論、しかも錬金石コミコミです。ブーメランはたしかに良いものをお持ちのようですが、3はレギュレーションが違って杖になりますので、神域を”推奨”しております』
「ぼったくりだ!職人どもと結託して…!」
『まあ”推奨”ですので無理にとは言いません…では1300万でよろしいと?』
「1300でも高いわ!」
『ほう…”必須”に逆らうと?すみませんがそう言う方は”出荷”に行ってくれませんかね?こちらは通常の相談所ですので』
「ぐ…貴様…こんなことがいつまでも続くと」
『我々は皆様の総意に基づきアドバイスを差し上げているだけですので』
大半の冒険者はノラと呼ばれる場所で仲間を集め旅立っていく
本来のノラは自由な空間であるとされる
実際自由に生きてきた者もそれなりにいる
しかしエンドコンテンツのノラは勝つためのノラ
最前線ではノラでも妥協は許さないーーー
そのような風潮が強くなってしまった
彼等は存在するはずのない強迫観念に追い立てられながら今日も戦っている
ビービービー
【毒ガードが90です。あなたは必須基準を満たしていません】
『”必須”に逆らったな?では速やかに”出荷”入りになって貰おうか』
「ま、まて!”出荷箱”釈放のアテがないんだ!ここに入れてくれよ!」
『どうせ前線に出ればバレるのにバカなことを…無駄な時間を使わせるな』
「オ、オレなら勝てるんだ!2時間も”練習”すれば!」
『”練習”といったか!そんなものは必要ない!勝つための意思以外は不要だ!』
【マッタリ!マッタリ!マッタリ!】
【ヒッス!ヒッス!ヒッス!】
【ギスラナイ!ギスラナイ!】
『そら、お迎えが来たぞ』
「やめろおおおお!!!」
ここまでのことをして得られるのは飾りだけ
一体何が彼等を駆り立てるというのか
ここはエンドコンテンツ
弱者が強者を目指す場所
強者が強者たり得る場所