注意)昔書いてた創作ものの続編です。創作苦手な方は読み飛ばし推奨。
くそったれに降り注いでいた太陽の光も、涼やかな風と共に和らぎむしろ肌寒さを感じるようになってきた。
コンシェルジュという仕事は、庭の掃除なんかの家事にに来客への対応と意外にやることも多い。
モンスターの放し飼い出来る庭具もあって、目の前をキラーマシンがギッシギッシと呑気に歩いている。
そいつを見ながら紙巻を一本取出し咥える。
内ポケットから銀色を取り出し、手に持った銀色を軽く手首のスナップを効かせて振りぬく。
(カキン、シュボ)
乾いた金属音とともに火花が散り、小気味よく火が灯る音がする。
コイツは、ちょっと癖のあって火をつけるのが難しい。
この形見のジッポを一発で付けることが出来るのは、俺の密かな自慢だ。
一本分燻らせ終えるころ、何時ものけたたましい声が聞こえてきた
「びゅーん!しゅた!」
ルーラの効果音、口で言ってるのかよ。
ここの主の緑色だ。
「最新型なの」
舞い降りる姿も慣れたものだ。二年前までは概ね死体で帰ってきていたからな。
「最近は大丈夫だよ!」
ほぉ、俺が神父辞めてから久しいが、教会の世話にはなっていないのか。
「鉄の金庫あるからお金減らない」
便利な世の中になったもんだな。
「成長したでしょ!」
お前じゃなくてアイテムがな。んで、お前一人か?あの毛玉はいねぇのか?
「へ?なんで毛玉?いま、ログインした所だから、一人だよ。」
メタな事を言うな。いや、そういう事なら良い。用事はあるか?
「特に無いかな。」
・・・!
そうか、そういやモーモンの料理が売り切れてたぞ。食材は仕入れておいたから作っておけ。
「お!たくさん売れてんだね!じゃぁ、作ってくよ。ぎぃバタン」
扉を開ける音も自前かよ。
こいつは、自分の親しい相手のみの販売だが、格安で料理を売っている。酔狂な事だ。
扉が閉まる直前に隙間に飛び込もうとした影があった。
空中で無造作に左手でつかみとる。矢だ。それも、クロスボウで打ち出すタイプのブリッドと呼ばれる類のものだ。
これを使う冒険者は居ない。装填に時間がかかりすぎるため、戦争くらいにしか役に立たない。
ご丁寧に毒々しい紫色の液体が、まさに猛毒でございますと語っていた。隠す気はないのか。
無事に扉が閉まり、射手へと振り向く。
予測通りキラーマシンが、左手のクロスボウをこちらに向けていた。
ターゲットをこちらへと切り替えたのだろう、こちらに向かって矢を次々と放ってくる。
静かにゆっくりとキラーマシンへと歩みを進め、打ち出された矢を羽虫を払うようなしぐさでつかみ取る。
外れた矢が扉や壁に刺さると大きな音が出る。掃除は済ませたのだから余計な仕事を増やすなというに。
せっかく緑色が精を出して料理中だ。大きな音を出すのは無粋というものだ。
7本目を数えた所であと10歩まで近づいた。さすがに矢が通用しないと悟ったのか今度は右腕のソードを構えてくる。これまたご丁寧にマヒャドの魔力を込めて。
暗殺仕様なのが幸いしてか、その挙動も静かなものだった。
そのことに内心胸をなでおろし、音を出さないように注意深く駆け出した。なに、昔はもう少し早く静かに走れたのだがな。
速度を変え態勢をひねることで、マヒャド斬りを空振りさせた。フェイントが通用するのは優秀な暗殺機械の証拠だ。
手に持っていた矢を返すことにし、関節部分に強引に突っ込んでいく。むろん、毒は効かんだろうが動作の自由を無くすには十分だ。まったく身動きの取れなくなったところで、強引に正面のボンネットを開けることにする。ここにコイツの中枢がある。
自動制御装置だが、ここにコクピットを捻じ込んだ狂気の改造を施した国家もあるというから恐れ入る。
だが、開いた中に制御装置などなく、見慣れた青い岩のモンスターが収まっていた。
げ!?
その得意の呪文も唱え終わりつつあった。
「メガンテ」