「くっ……!」
無数の攻撃が襲いかかってくる。
あれは特技だ――天地の構えでは受けられない。
僕はとっさに水流の構えを取る。だが……
「間に合わないか……!?」
――だが。
(これは……何だ?)
思ったよりも、ダメージは少ない。
本職の踊り子が使う“つるぎの舞”とはまるで比較にならない。
「馬鹿な……なぜだっ!!」
ゲイザーが血を吐くように叫ぶ。
僕は知っている。
踊り子は防御を捨て、その代わりに二刀流での絶対的な攻撃力と、多才な歌や踊りに特化した職業だ。バトルマスター以上にピーキーで魅力的な、ひとつの極地……。
そう、踊りスキルを極めるということは、そう容易いことではない。
「クソッ! もう一度だ、くらえっ!」
ゲイザーはまたもつるぎの舞を繰り出す。
だが……
「ゲイザー……
お前の技の底は――」
「見切ったぞ!!」
――そう、ゲイザーは確かに、つるぎの舞を使った。
だがこいつの使うのは、魔物であるキラージャックが使うものだ。
当然のことだった。この男はレンダーシアに渡っていない。
ダーマ神殿で試練を乗り越えた先に習得できる、踊り子のスキルを
そう簡単に身につけられるはずもない。
ゲイザー、お前は最強になると言ったな。
お前の言う最強は、そんな程度だったのか…?
見た目ばかりで、まるで中身が伴っていない!
きっとお前は、強さに憧れ、二刀流を身につけたのだろう。
だが、ならばなぜ……
「あっそ~れ!
ハッスルハッスル~!」
……なぜ、旅芸人にしか使えない特技を、身につけたままなんだ?
本当に力を、攻撃力を求めるなら、
なぜバトルマスターや踊り子に転職しない?
そして、観察していて気づいた。
ハッスルダンスの回復量……
“71”
少ない……
あまりにも……
ああ、そうか。
ゲイザー、お前は……時代に取り残されていたのか。
だからお前はそんな風になってしまったのか。
だったら僕が終わらせる。
弟弟子にして、現代の旅芸人が……!
僕はなおも向かってくるゲイザーを見つめ、静かに決意した。
(第9話に続く)
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