「――死になさいッ、ポルファン……!!」
そうして振り下ろされた棍は、
ガキンッ!
鋭い音をたて、弾かれていた。
「なん……だと……?」
――そこには。
そこにいたのは。
エメラルドブルーの衣をまとった、一人の旅芸人。
「お、お前は……」
「…………」
「お前は死んだはずだっ!」
「悪魔道化師、ゲイザーーッ!」
「よう。久しぶりだな、弟弟子。
そして一つ訂正だ。
今のオレは悪魔道化師じゃない。
ただの……出来損ないの旅芸人さ」
「ば、馬鹿な……どうして……?」
「ははっ、道を踏み外しそうなお前のために
地獄から舞い戻ってきた……ってのはどうだ?
面白いだろう?」
ゲイザーは不敵に笑う。
「ゲイザー……おめえさん……」
「ポルファン師匠……。
アンタの教えをろくに身につけられなくて
不義理して、死んじまって……
最後までロクでもない弟子だったけどさ。
……。
でも、こんなオレでも。
いや、こんなオレだからこそ、この役回りがふさわしいだろ?」
「……なはは。いけねえなあ、オイラはよう。
涙なんか流しちまってよお。
なはは……トシをとっちまったなあ……」
師匠は……顔を上げ、
今まで一度も見たことのない厳かな表情で、言った。
「……そうか。
芸を愛する心を、取り戻したのだな。
今のお前になら、あるいは……届くかもしれん」
「ああ。必ず、届かせてみせる。それが最後の、アンタへの孝行だ」
「馬鹿な……。私の棍を、受け止めた? レベル50にも満たない旅芸人が?」
「はっ、盾ガード率にレベルは関係ない。そうだろう?」
確かに、盾ガード率は盾本来のガード率、できのよさ、錬金、盾スキルによって決定される。レベルもパラメータも関係ない……。
「フォ……フォッフォッフォ……。
だが所詮は確率頼みの運任せ。これだから旅芸人は度しがたい。
地力の差は運で覆せるものではありませんよ?」
「さあ、どうかな。やってみなければ分からんさ」
「せっかく墓の中から這い出てきてもらったのに恐縮ですが……
だったら、私が殺す最初の旅芸人は
あなたにさせていただきますよ、ゲイザーッ!」
「………」
ガキンッ!
またも、……私の棍が弾かれた……?
「十年早いぞ弟弟子。
オレはずっと旅芸人を殺し続けた。
悪魔道化師でなくなったとしても、
お前を殺す方法を、オレなら100は用意できるぞ」
「きゅ、旧時代の旅芸人の分際でッ……!」
なんという傲慢ッ!
まだ、まだ旅芸人には……何でもできるのだと、
疑うことなく信じていられた時代のッ……!!
「ならばもう一度、思い知らせてあげましょう!
あなたと私の、隔絶した世代の差というものを……!」
「来いよ闇芸人。お前の絶望、オレが受け止めてやる」
旅芸人ゲイザーと闇芸人ホーリン。
戦いの第二幕が、切って落とされる……!
(第10章へ続く)
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