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孤独の闇芸人

ホーリン

[ホーリン]

キャラID
: TG682-832
種 族
: エルフ
性 別
: 男
職 業
: 旅芸人
レベル
: 111

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ホーリンの冒険日誌

2017-05-06 23:03:14.0 2017-05-07 23:57:59.0テーマ:シナリオ・クエスト攻略

伝説の旅芸人への道2017 闇芸人・決戦編 ~第19章~


「ぐっ……おおっ……」

 闇芸人ルルルリーチが膝を着く。
 もう一撃で、その命は尽きるだろう。

「フォッフォッフォ……さすがです。
 さすがですよ旅芸人。
 あなたほどのチカラを持つ旅芸人ならば、
 私以上の闇芸人になれるのではと期待していましたが……
 しかしあなたは光をまとった。
 もう手遅れですね。
 闇が光に勝てないのは、道理というもの……」

「ルルルリーチ……?」

 なぜ。
 なぜこいつは、そんな諦めたようなことを言う?

 たしかに、ルルルリーチはレベル50にも満たない旅芸人には強敵だった。
 けれど今の旅芸人なら、実力で簡単に押し切ることができる。

 僕が闇に飲まれる前、氷結らんげきでも面白いように削れ――

「えっ……?
 どういう、ことだ……?」

 僕はその瞬間、気づいた。

 氷結らんげきは、一撃あたり300を超えていた。
 覚醒状態のバギクロスは、600近いダメージを与えた。
 ……それは、少しだけ、かみ合わないのだ。

 ダメージが、“予想よりも大きかった”。

「まさか、ルルルリーチ。
 お前の弱点属性は……氷と、風なのか?」

「…………。」

 ルルルリーチは、氷と風に弱い?
 こいつは自分でヒャダルコやバギクロスを使う。
 それは旅芸人が使える呪文だ。

 自分が使う属性攻撃には耐性がある魔物は多い。
 そうでなくても弱点と言うことはないだろう。

 なのに、ルルルリーチは……
 他ならない“旅芸人の使う呪文”に弱い!!

「どうしてだルルルリーチ。
 どうしてお前は……!
 まさか……」


「お前は、旅芸人に倒されたかったのか?」

「…………。」

 その理由を、僕はひとつしか思いつかなかった。
 罰せられたかったのだ。
 他ならぬ、旅芸人に。
 それはなぜ?

「後悔、してるのか?
 闇芸人になったことを……」

「いいえ、後悔はしていませんよ。
 闇芸人こそが私の天職だったのです」

「ならゲイザーを悪魔道化師にしたことか?」

「いいえ、あれはゲイザーが望んだこと。
 それもまた、後悔はしていません」

「旅芸人たちを殺したことか?」

「いいえ、力ない冒険者が魔物に倒されるのは世の常。
 魔物である私が、それを後悔はしません」

「だったら……」

 まさか。
 もしかすると、こいつは。

「お前は、自分の師匠を殺してしまったことを……
 後悔、しているのか?」

「………………。」

 ルルルリーチは、静かに目を閉じた。
 まるで、祈りを捧げるように。
 懺悔をするかのように。


「それも……、もう忘れてしまいましたよ」

「……お前は、本当に自分の師匠を、殺すつもりだったのか?
 もしかすると……」

 ルルルリーチは首を振った。

「いいえ。私は師匠をこの手にかけました。
 今でもこの手に、その感触が残っています……。
 それだけが、事実なのです……」

 想像にすぎない。
 だけど、思ってしまった。

 ルルルリーチは、自分の芸に思い悩み、師匠と口論になって――

 人間に芸が受け入れられなくて。
 そして自分の師匠を殺してしまい。
 弟弟子と戦って、傷つけ……そして。

 最後には、旅芸人そのものを憎むようになってしまった。

 だから。
 ルルルリーチは“闇芸人”として選ばれたのだ。
 旅芸人に対する絶望を、アストルティアに現す器として。

「ほんの少しだけ……何かが違っていたら……」

「もう過ぎたことですよ……。
 この戦いは旅芸人の勝ちだ。
 さあ、旅芸人ホーリン。
 私を殺し、旅芸人たちにひと時の平和を与えて差し上げなさい」

「ルルルリーチ……」

 なら。
 こいつへのとどめは、この特技しかない。

「……安らかに眠れ」





「闇芸人の根源。
 いま、その絶望に光を――」





「――“黄泉送り”!!」

 宝珠によって極限まで強化された浄化のチカラ。

 棍のスキル22ポイントで取得できる最初の攻撃特技。

 ゾンビ系ではない闇芸人には、大した効果はない。
 それでも。

「――届け! 闇芸人っ……!」

 その時たしかに、ルルルリーチの鳴き声とともに。
 どこか遠くから、悲鳴が聞こえた。

「ああ……これで私もようやく……。
 次に生まれ変わったら……
 もう一度、あの子たちを……笑わせて……差し上げ……」

 ルルルリーチは目を閉じ。
 やがてゆっくりと魔障に帰り。
 光に溶けて消えた。

「ルルルリーチ……」

 ニセモノの世界で、闇芸人として振る舞っていた頃。
 僕は彼の口調を真似て暮らしていたのだ。

 彼はきっと……僕にとって、もう1人の師匠だった。


(第20話に続く)


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