(以下バージョン7.2までのネタバレがあります。)
そして、バージョン7.2でグランゼニス神は、ナドラガ協団の大神殿でエステラが創失した際に創生のチカラのうねりを感じたと話していました。
また、執行者ガンガブラは、執行獣となっての戦闘中に「我が主のチカラを見よッ!」と叫びながら創失の能力を使うことから、主(あるじ)からその能力を授かった可能性はありそうです。
すると、対象から創生のチカラを失わせる創失は、創生のチカラを操る何かしらの技術であり、主が他者にその技術を使う権限を与えることもできるようです。
日誌「ボルテの師匠・レトリウス・グランゼニスの語源について考える(2)」で以前触れていたのですが、
「6.3で兄弟姉妹が、ルティアナの清泉の水からルティアナの神気だけを抜き取って物質化する「抽出(分離)」という錬金術を使っていたのですが、
恐らく物質ではない創生のチカラを対象から奪い取り、その存在を消し去る「創失」と少し似ているようにも思えるのですが、創失についてはまだ不明なところが多く、比較して良いのかまだ判断がつかないです。」
錬金術師パラケルススの著作『医師の迷宮』(邦訳はホメオパシー出版)p.91によると
「錬金術とは、役立たないものと役立つものとを分離し、最終の物質や本質へともたらす技術」と、錬金術における「分離」の概念が提示されています。
また、同じくパラケルスス著の『アルキドクセン』(邦訳は同)「第三巻 元素の神秘」によると、パラケルススが主張する万物の誕生の根本原理が述べられており、ここに書かれている訳者による解説を少し引用してみます。
「すべての事物は『分離』によって誕生する。したがって分離は、あらゆる誕生の原型と言ってよく、自然における最大の神秘であるとされる。最初の分離が元素の誕生である。パラケルススの製薬術あるいは調製法の基本は、混合ではなく分離であり、構成ではなく抽出である。」
バージョン6.3で天星郷の薬師サワディエルが、自分は混ぜるのは得意だが分離は難しく、兄弟姉妹に頼んで、ルティアナの清泉の水から神気のみを錬金術で抽出(分離)して欲しい、という主旨で話していましたが、
これを踏まえた上で上記の『アルキドクセン』の解説文を読むと、分離・抽出と混合(混ぜる)が対立関係になっていて、
パラケルススの錬金術では事物を生み出す(このゲームで言うと「創生」)には「分離」が不可欠ですが、ここがゲームに参照されている可能性はあるでしょうか。
では「創失」と「分離」がどういう関係なのかは、「創失」に関する情報がもう少し出てくれば、関連の有無やここを問題として推論して良い箇所なのかがもう少し見えてくるのではと思います。
アルウェーンの町でプクリポから生体エネルギーを蒸留器のような形をした装置で抽出する技術が、イスラム世界や中世ヨーロッパの蒸留に似ているようにも見えます。
精油を花を蒸留して集めるように、アルウェーンでは「花」の民プクリポから精気(生体エネルギー)を抽出する装置が置かれているのは、錬金術の暗示という可能性はあるのでしょうか。
町の中央にある管理棟のタワーも、炉に埋め込まれたフラスコのようにも見えます。
蒸留と昇華の暗示はあるのかどうか。
プクラスの複製体C141の決めゼリフ「イア・タア・シンパッ・ケウ」。
「イア・タア」は、パラケルススが創始した「イアトロ化学」の「イアトロ」の音に訛らせることもできますが、
どういう意図で描かれているかを事実確認するには、「イア・タア」の語源である「いやったぁあああああ!!」を口にしていたパルミオ・プクラス父子の再登場を待つことになりそうです。
おわり