……むかしむかしのアストルティアの話です。
その頃のアストルティアには、おしゃれ仕立て屋もカラーリング屋もなく、みんなが思い思いの服を着てすごしていました。
……だったら良かったのですが、実際はみんな魔法の鎧と水の羽衣と無法者セットしか着ていませんでした!巷に溢れる同じ服を着た人たち。ユニクロのウルトラライトダウンよりも、上の3つの服が流行っていました。
かく言う私も、その3つのセットは持っていました。だって魔法の鎧、すごく便利だったですし。
そんなある日のことでした。
グレンを走っている途中に、すごくかっこいい服のオーガさんがいらっしゃいました。
薄手のベストにホットパンツを合わせていて、体のラインがとてもきれいで、思わず足を止めて見とれてしまいました。
新しい装備でも出たのかと思ったのですが、詳しく見てみると違いました。ドレスアップもない時代ですから、当然彼女の装備は、
E.無法者のベスト
E.はやてのキュロット
E.無法者のうでわ
E.みかわしのくつ
見事にバラバラでした。
当時の私には、装備のグレードを落としてまでオシャレをする勇気もレベルもありませんでしたが、彼女の姿は私の心に深く刻み込まれました。
……それからしばらくして、世界にドレスアップというものが生まれました。
私は早速、ちょっと上等の無法者セットを買ってきて、ドレスアップを試してみました。
モノトーンが好きではないのでベストは緑に染めて、腕は無骨な無法者ではなく金のブレスレットに変えてみましたが、ほとんど昔見たオーガさんの格好です。
こんなに違和感のない服には、その後も二度と出会えませんでした。
フレにも相方にもいいねと褒めてもらえたのですが、えらいのは私ではなくて、あの日のオーガさんなのです。
私にとっての最高のおしゃれマスターは、今も昔も名前も知らない彼女です。