怖い夢だった。
アタシはネコを2匹飼っていて、
ブサイクだけど、とてもひとなつっこいオス猫の方が、家から脱走した夢だ。
とにかく近所を探した。
そしたら、ビニール袋に入れられている彼を発見した。
彼は怯えていて、アタシを見つめて鳴いた。
なんとも言えない、見た事もない顔をしていた。
アタシは駆け寄り彼を抱き上げた。
彼の手足は切断されていた。
アタシは子供の頃飼っていたネコが好きすぎて、彼の事はまぁ普通。
飼い主としてそんな事を思っていた罰が、
アタシではなく彼に下ってしまったと悔んだ。
彼が可哀想で可哀想で、自分が情けなく、申し訳ない感情があふれてきて、
抱きしめて泣く事しか出来なかった。
そこで目が覚めた。
今はもう居ない彼女の事より、
今居る彼を愛してあげようと思った。
その3日後、
外出先から帰宅すると、リビングに羽根をもがれたセミが転がっていた。
出かける前、洗濯物を取り込んだ時に入ったんだろうか。
セミの周りにはネコの足跡が山程あった。
ネコは本来ハンターだ。
きっと悪い事したとは思ってないだろう。
なんだったら褒めてもらえると思っているかも知れない。
若干ゴメンなさいの鳴き声をしているが、
コレはいつもアタシがキレるからだろう。
いいよ。大丈夫。獲物上手く捕まえたんだね。
それからベランダに続く網戸を開けるため、
ネコ用のロックを外そうとして下を見ると、網が破られていた。
その時アタシは全てを悟った。
部屋に居るだけでは付くはずのない足跡の意味を。
セミは洗濯物について家の中に入ったのではない事を。
彼が羽根をもがれたセミのようだったあの恐ろしい夢は、
予知夢の可能性がある事を。
その犯人は誰だったのか。
部屋の奥で、彼がゴメンなさいの声をあげている。
アタシは彼の名を呼びながら、ゆっくりと近づいた。
振り向きざま、
窓に映った自分が微笑を浮かべているのが見えた。