「えへへっ♡」
言っちゃった瞬間、ほっぺが勝手にゆるむ。
だって、見て。天井からぶら下がる星たちが、きらきら踊ってる。甘いお菓子みたいな雲の飾りが、ふわっと光って、空気まで砂糖を溶かしたみたい。
「かわいい……」
自分で言って、また照れる。ブーツの中でつま先をきゅっと動かすと、氷の床がひんやり返事をした。つめたいのに、嫌じゃない。背中に回した手袋が、ふかっと温かい。光るツリーが左右で呼吸して、白と水色が胸にしみる。
「ねえ、プレゼントいっぱいだよ」
「開けなくても、もう楽しいね」
ひとりごとが、鈴の音に混じる。ちりん。
ガラスのオーナメントが、私の声を覚えてくれたみたいに揺れた。
「ここに来るとさ、心が軽くなるんだ」
風船がゆらゆら揺れて、透明な中に小さな星が泳ぐ。遠くで音楽。やさしいテンポ。思わず肩が弾む。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「楽しいって、言っていいんだよね」
言葉にすると、胸がぽっと温まる。コートのリボンが、しゅっと鳴って、私も一歩前へ。
「えへへっ♡」
もう一回。
今度は、少し大きな声で。
白いツリーが、きらっと笑った気がした。