魔塔十三不塔――幼女の頭はパルプンテ
みるくは白と薄桃色のフリルドレスを着た幼女を画面の中央に立たせ、灰色のステテコ姿でコントローラーを握っていた。魔塔の石壁には青白い魔法陣が浮かび、散らかった机には冷めた麦茶、胃薬、醤油の染みがついた攻略帳面が並んでいる。通常の冒険なら、戦士には戦士、盗賊には盗賊と、使える特技にはそれなりのまとまりがある。ところが魔塔では、戦士、バトルマスター、盗賊、武闘家などの特技が一つの欄へ放り込まれ、しかも使いやすい順番に並べ替えられなかった。
「これは特技欄ではなく、闇鍋でしゅ」
みるくは心頭滅却を探して特技欄を下へ送り、通り過ぎたと思って上へ戻し、今度はどこまで戻ったか分からなくなった。やいばのぼうぎょ、テンションバーン、打成一片、ギガボンバー、つるぎの舞、チャージタックルと、特技は強そうな顔をして並んでいるが、みるくの頭の中では誰一人として同じ職場に所属していない。麻雀なら一萬、九萬、一筒、九筒、東南西北白發中と、ばらばらの牌がそろった十三不塔である。しかもこちらはローカル役として認めてもらえるどころか、選択中にも三体の敵から殴られ続けていた。
「役満ではなく、床満になりそうでしゅ!」
そのとき胃がきゅっと縮んだので、みるくは台所へ逃げた。鍋には夜食に作った大根とわかめのおじやが少し残り、大根は煮崩れて、ご飯と区別がつかなくなっている。冷蔵庫の扉には輪ゴムで留めたスーパーの割引券があり、流しには洗っていない小皿と一本だけの箸が置かれていた。みるくは残ったおじやを温めながら、魔塔の特技も煮込めば、せめて戦士味か盗賊味のどちらかにまとまるのではないかと考えた。
「武闘家と盗賊を一緒に煮たら、すばやい泥棒が完成するだけでしゅね」
おじやを食べ終えたみるくは、帳面の新しいページに大きな字で三つだけ書いた。「心頭滅却」「リベホイミ」「打成一片」である。全部の特技を理解して使いこなそうとするから、頭の中でパルプンテが唱えられ、必要な一手まで消えてしまう。ブレス耐性七十、混乱ガード百、レベル四十九、HP四百八十三なら、幼女の身体はすでに十分強かった。あとは十三枚のばらばらな牌を全部そろえようとせず、その場で使う三枚だけを見失わなければよい。
「本日の手牌は三枚で勝負しましゅ。残りの特技は見なかったことにしましゅ」
みるくは白いタオルで額を拭き、フリル姿の幼女を再びボスの前へ立たせた。最初に心頭滅却を使い、キングスライムを呼び、リベホイミをかけると、敵のブレスは完全に効かなくなった。キングスライムが定時退社する前に、みるくはジバルンバとギガボンバーを置き、弱った敵へ打成一片を振り下ろした。職業はばらばら、特技欄もばらばら、頭の中もまだ十三不塔だったが、敵の一体が先に床へ倒れた。
「幼女をいじめたらいけないんでしゅ。かわいいは正義、爆発はもっと正義なんでしゅよ!」