倒す前から勝利のヒレカツでしゅ
魔天海フォルネーに三度目の挑戦をする前、みるくはゲーム画面の撮影機能を開いた。桃色のドレスを着た小さな魔法使いは、女神の杖を背負い、立派な椅子の前で片膝を曲げている。隣には桃色の衣装を着た女性が立ち、まだ倒していないボスの勝利記念写真に付き合ってくれた。みるくは画像を眺め、口元を指で押さえながら、もう攻略を終えた人のように胸を張った。
「これは記念写真ではなく、予祝でしゅ。先に勝ったことにして、未来を迎えに行くのでしゅ。」
台所では揚げたてのヒレカツが、白い皿の中央に三切れ並んでいた。横には刻んだキャベツを山のように盛り、ゆでたブロッコリーと赤、黄、オレンジのパプリカを添え、端には半月形に切った檸檬を置いた。茶色いヒレカツだけではボス戦の床のように見えるが、野菜を並べると王宮の祝宴らしくなった。みるくはソースをかけすぎないよう容器を両手で持ち、細い線を往復させた。
「身体は食べ物でできているのでしゅ。だから今日は、ヒレカツだけでなく、キャベツもブロッコリーもパプリカも食べるのでしゅ。」
ヒレカツの衣は箸を入れると小さな音を立て、檸檬を搾ったキャベツから青い匂いが立った。みるくは赤いパプリカをかじりながら、テレビの下に貼った「敵を見る」という紙を読み直した。その横には「道具は戦闘前に確認」「一度に全部しない」と、前回の敗北から持ち帰った言葉も並んでいる。レベル五十八でも勝てなかった事実は消えないが、二回、三回と失敗したからこそ、泥沼ポンプは背後へ回り、ブラストウェーブは横へ逃げ、触手れんだは防御するという仕事が見えてきた。
「心は読んだ言葉と、聞いた言葉でできているのでしゅ。文句も言いましたが、攻略法もちゃんと読んだのでしゅ。」
食事を終えると、みるくは桃色の半袖シャツの胸元を整え、皿を流しへ運んだ。フライパンにはパン粉が数粒残り、まな板の隅には使わなかったキャベツの葉が一枚載っている。すぐ洗うつもりだったが、フォルネーを倒した未来のみるくなら、食器を少しくらい後回しにしても許すだろう。席へ戻ったみるくは攻略用の紙に、もう一行だけ大きく書き加えた。
「未来は話した言葉と、書いた言葉でできているのでしゅ。だから、『いつか勝つ』ではなく、『魔天海フォルネーを倒しました』と書くのでしゅ。」
四度目の戦闘は、まだ始まっていなかった。けれど画面の中には勝利記念写真があり、胃袋には彩り豊かな前祝いが収まり、テレビの下には倒した後の言葉が貼られている。みるくは道具の位置を一つずつ確認し、グレイトマーマンのツボをすぐ選べる場所へ合わせてから、女神の杖を持った小さな魔法使いを入口へ立たせた。最後に檸檬の香りが残る指先でコントローラーを握り、未来から現在へ届いた報告を読み上げた。
「魔天海フォルネーを倒しました。おめでとう、みるく。不撓不屈で勝ったのでしゅ♡」