ゲームは楽しむためのものでしゅ
魔天竜ブーネイとの戦闘から戻ったみるくは、コントローラーを机の端へ置き、電源を切った。薄い水色の部屋着は背中に張りつき、十八度に設定した冷房の風が、取り込んだままのタオルを揺らしている。胃のあたりがキリキリして、画面に残った巨大な竜の顔を見るだけで、もう一度バギムーチョを受けたようになった。みるくは両手でお腹を押さえ、空になった麦茶のコップを流しへ運んだ。
「二度とやらないでしゅ。当分やらないでしゅ。二度とと当分が同居していますが、今は細かいことを言わないでくだしゃい。」
電気ケトルで湯を沸かし、白いカップへ注いで少し冷ました。みるくは白湯でブスコパンを飲み、ソファへ座って、膝に薄いタオルケットを掛けた。昼に食べた冷ややっこの皿には、刻みネギが二切れだけ残り、トウモロコシの芯は新聞紙の上で転がっている。ゲームをして胃をなだめる薬を飲むのは、遊園地へ行って自分から酔い止めを十錠注文するようなものだった。
「ゲームは楽しむためのものだったはずでしゅ。診察券を増やすためのものではありましぇん。」
ブーネイ戦では、みるくのメイルストロムが一度当たっても、敵の大きな腹はほとんどへこまなかった。次の一発を撃とうとしてもCTはなかなかたまらず、その間に心頭滅却、魔結界、リベホイム、ベホイムと、やることだけが宅配便のように届いた。レジェンドホースのツボも、気づいたときには戦場から消えていた。派遣された馬が帰宅したことにも気づかず、みるくは一人で横へ走り、床から逃げ、ジャンプし、最後には棺桶屋へ配達された。
「せめて帰るときは、『お先に失礼します』と言ってほしいでしゅ。無言退勤は禁止でしゅ。」
白湯を半分飲むと、みるくはゲームの中の自宅へ移動し、戦闘ではなくハウジング画面を開いた。白いフリルのドレスと水色の靴に着替え、麦わら帽子をかぶった小さなみるくは、南国の植物と滝に囲まれて立っている。枝には赤いインコと大きなくちばしの鳥が並び、誰も大地裂きを使わず、バギムーチョも唱えなかった。滝の水音と光の粒を眺めていると、特技欄を探す必要も、消えたツボを捜索する必要もなかった。
「ここでは鳥が途中で消えても、契約時間ではなく演出でしゅ。とても平和でしゅね。」
みるくはコントローラーを置き、洗っていなかった冷ややっこの皿を片づけた。それからカップへ白湯を足し、明日は魔塔ではなく、釣りかハウジングをしようと帳面へ書いた。四十階は逃げないし、ブーネイは待つことだけは得意なので、こちらが元気になるまで何日でも腹を突き出していればよい。みるくは南国の部屋で撮った写真を眺め、胃のあたりへ温めた手を当てた。
「ドクターストップがかかる前に、みるくストップをかけたのでしゅ。今日のボスはブーネイではなく、休まず続けたくなる自分でしゅ。」