※この日誌は、フィクションです。
ゲーム内のキャラを使っていますが、発言、設定などは私個人の空想です。
この作品は、全国のドワーフファンに送ります。
悲しみに包まれて、私はこの場所に戻ってきた。私の、実家に。
自分から家を出ていったくせに、虫のいい話だと思う。
けど、今の気持ちを収めようと、真っ先に浮かんだのはこの場所だった。
相談する相手として、浮かんできた顔はあの顔だった。
考えことをしている間に、大地の箱舟はガタラに到着した。
私は、自分の育った場所、ガラクタ城と呼ばれる建物の前にいる。
「ただいま」
「おや、おかえりなさい。チリじゃないですか、どうしたんです?」
建物の中には、私を育てた父親、ダストンがいた。
何よりもガラクタを愛する、風変わりな男。けど、私の唯一の家族。
「なんでも。娘が家に帰ってきて、悪いの?」
「そんなことはないですがね。帰ってくるなら、先に手紙くらいよこしなさいよ」
私は、返事もそこそこに、近くの椅子(のようなガラクタ)に腰かけた。
久しぶりに帰って来たというのに、全く不愛想で可愛くない娘だ。
自分でもそう思う。本当に、私はなんでこんなに落ち込んでいるのだろう。
自分が選ばれるとばかり思っていたから、それがいけないんだろうか。
「疲れた表情していますね。具合悪いんですか?」
不愛想な娘に、父親は珍しく優しい言葉をかけてくれる。
「お腹すいてませんか? スープ、温め直したのありますよ」
「お父さん」
「なんです?」
「何でいきなり帰って来たか、聞かないの?」
「別に、話したくないならいいですよ」
「何で、今日はそんなに珍しく優しいの?」
「は? お前は何を言ってるんですか。当たり前のことですよ」
「当たり前?」
「何言ってるんですか、私はガラクタには優しいんですよ」
「ガ、ガラクタ・・・・・」
私の中の血液が一気に逆流して、頭に上った。
「誰が、ガラクタだっていうのよ!」
私は、声の限りに叫んだ。
「お父さんでも、言っていいことと悪いことがあるわよ!ガラクタなんて!!
コンテストの候補者に選ばれなかった私を、ガラクタ呼ばわりなんて!!」
すると、父はきょとんとした表情で。
「なんのことです、コンテストって」
「だから、クイーンコンテストのことだって・・・ほんとに、知らないの?」
「私がそんなコンテストなんてものに、興味あるわけないでしょ」
べつに、コンテスト候補に落選した私を、ガラクタ呼ばわりしたわけではないらしい。
それなら、なんで私のことをガラクタ呼ばわりしたのか。
「ほんとに・・・・、ガラクタみたいな輝きの目をしていますねぇ」
・・・・目?
「あなたが、捨てられていて泣いていた時の目にそっくりです。
寂しそうで悲しそうで、光のこもってない、ガラクタのような輝きです」
捨てられていたころの、あの頃の私。
「必要とされず、捨てられていたあなた。
私の愛するガラクタたちのようで、拾って育てることにしました。
今のあなたの目は、まるであの時のようですよ」
確かに、あの時の私は、泣くしか能がなかった。
けど・・・・、けど、今は違う。
「何、言ってるのよ」
私は父を真正面から見据えて、言い放った。
「あの頃の私なんかと、一緒にしないでよ
今の私は、ドルワーム王宮で、王立研究員として立派に働いているの。
確かにちょっとショックなことがあったけど、泣くしか能がない頃と、
赤ん坊の頃と一緒にしないでよね!」
そうだ、そして絶対に返り咲いてみせる。あの、ステージに。
毅然と立ち上がった私の顔を見て、父は口を開いた
「・・・・・いやな目ですねぇ」
「何よ、褒めたりけなしたりして」
「さっきまでガラクタみたいだったのに、キラキラと宝石のように輝いて。
この家には、ガラクタ以外の置き場所はないですよ。そんな宝石みたいな
目をしているなら、元の居場所に戻ってください」
「言われなくても、帰るわよ」
そうだ、私のいる場所はここじゃない。踵を返すと、私はドアへ向かった。
「・・・・・あのさ、お父さん」
「何です?」
「ありがとう」
私は振り向くことはせず、足早に実家を後にした。
「まったく・・・、私の大嫌いな宝石みたいな目をしやがりまして」
ひとり残ったダストンは、誰に話しかけるともなく呟いた。
「親の心子知らずというか、本当に親不孝な娘ですよ」
その口調は、寂しいというよりも、どこか誇らしげで嬉しそうだった。