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ギャンブルクイーン

シラベ

[シラベ]

キャラID
: ZZ714-726
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: デスマスター
レベル
: 127

ライブカメラ画像

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シラベの冒険日誌

2021-05-14 08:39:49.0 2021-05-20 22:13:10.0テーマ:その他

風鈴バックストーリー 第一章 02:ある花の欠片

「飾り付けはこんな感じでいいかな?」
 ソフィはケーキのトッピングを終えると私に尋ねた。

 ふんわりしたショートボブで亜麻色の髪、目鼻立ちのくっきりとした顔に大きな蒼碧色の瞳、溌剌(はつらつ)とした声調に相まった明朗快活な性格。『明るく元気』という名札を提げているかのような彼女は、実際の年齢よりもずっと幼く見える。曲がったことが嫌いで、誰に対しても何事にも物怖じしない姿勢は、広く村の皆から愛されていたし、私自身、彼女のそんな真っ直ぐな生き方に惹かれ、親の反対を押し切り彼女と生きる道を選んだ。時間というのは思い返せばあっという間で、あれからもう10数年の月日が流れたが、今この時、人の母なった彼女は当時と何ひとつ変わっていないように思える。

「どれどれ…。」
私はテーブルの上で構えるケーキを見る。一刻前まで雪原のゲレンデのような真っ白い生クリームに覆われていたそれは、ソフィにデコレートされ華やかに着飾られていた。美しい円形のスポンジ台は上下2段のセパレート構造になっていて、各々のスポンジ台には形に合わせて真っ赤な苺が等間隔に並べてある。その間間には近隣で採れたブルーベリーが添えられており、それはかの大輪を思わせた。
「うん。とても綺麗に出来ているね。」
「でしょ?」
ソフィは少女のように満面の笑みを浮かべ、握った両手を腰にあてて誇らしげに言った。
「し・か・も。」
それだけではないぞ、と言いたげに言葉を付け加えようと私の顔の前で右手の人差し指を発音のリズムに合わせて左右に振って見せた。何を言いたいのか察した私は、彼女の次の言葉を待たずに、すかさず割って入る。
「この模様はストロベリーガーベラ。アスタの好きな花だ。」
私がふっと笑って見せれば、自慢のセリフを取られていつもの様にふくれっ面でもして見せるのかと思ったが、ソフィの反応は意外なものだった。
「・・・そう。あの子が、好きな花。」
少し驚いた表情をした後、そう言って少し微笑むと、それきり黙ったままソフィは『花』に視線を落とした。
その花を見つめる顔にいつもの元気はなく、必死に悲しい色が顔に滲みでるのを堪えるように、唇をぎゅっと噛み締めている。
「(・・・ああ、そうか。)」
私は心の中で自分自身の認識を改めるようにそう呟いた。意識の奥深くで私は、迫る現実に厚い壁で蓋をしているのかもしれない。気づけば何処までも深く深く沈んでいく不安や寂しさといった感情に僅かでも鈍くあれるように。なによりもあの子の前でだけは、そんな姿を絶対に見せまいと心に決めていた。
だが今になって、それらは抑えようのない高波となり、深い底から壁を叩きつけているのだった。

 やはり私は理解し、これと向き合わなくてはならない。今、彼女がそうしているように。この花が私にとって、私たち家族にとって何を意味するのか。ちゃんと受け止めるべき時が来たと、彼女から声のない言葉が飛んで来ているような気がした。

「(・・・そうだったな。もう明日なのか。)」
そう、この花は...アスタとの、娘との別れの象徴なのだ。

ソフィはずっと俯いたまま、口元を両手で覆っている。
熱いものが目尻に浮かび溢れ、僅かに頬を伝って花の傍に零れていた。
私は彼女の視線を通して、その先にある『明日という名の花』に、わが子への愛情が、願いが染み込んでいくのをいつまでも見つめていた。
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