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ギャンブルクイーン

シラベ

[シラベ]

キャラID
: ZZ714-726
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: まもの使い
レベル
: 133

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シラベの冒険日誌

2023-04-10 19:12:56.0 2023-04-10 19:26:19.0テーマ:その他

演劇「魔王の玉座」-序幕『選書』其の六 #プレイヤーイベント導入

「だれ!?」私は思わず声をあげた。
すると、さっきよりもハッキリと声が響いた。

「だれか私の声が聞こえますか」
それは、あの女性の声だった。

「聞こえてるわ、あなたは誰なの?」
私が声に応える。

「誰かいるのね、あぁ、よかった!」
その声は、まるでなにかにすがるように私に言った。
「お願い、助けてほしいの!」
状況に頭が追いついていない。
その上に助力を求められ、私の頭は混乱していた。

「ちょっとまってよ、あなた誰なの。
何処から声を出してるの?」
できるだけでも状況を整理しないと、
私の頭の中はそのことでいっぱいだ。

「ゆっくり説明したほうがいいのは分かってる。でも時間があまりなくて」

「声は、あなたのちかくに媒介があって、それを通して届けています」
媒介をとおして、それに時間がないって。
少なくとも媒介と言う言葉を使うところを見ると、
それが何かは分かっていないらしい。

全く状況がわからないままだけど、
ひとつだけ確かなことがあった。

彼女が人を選べる余裕がないほど、
何かに追い詰められているということ。

私はかるく息をすったあと、
単刀直入に声の主に問いかけた。

「私で、なにか力になれることがあるのね?」
私の答えに声の主は少し驚いたのか。
つかの間の沈黙のあと、安堵した声で主は言った。
「ありがとう。それじゃ簡単に伝えるね」
「まず媒介を探してください。声が聞こえているということは、近くにそれがあるはず」

「わかった」
声のもとを辿れということね。
たしか、私が以前に声を聞いたのは町中だった。
図書館の帰りに母と歩いていて、
その時はあまりハッキリと聞き取れなかったけれど。それから一度も声は聞いてない。
その時と同じで、いま部屋にあるものは・・・。

「これかな、少し声をだしてくれる?」
書架の前に立って私は声の主に伝えた。
声はより鮮明に頭の中に響いた。

「あなたの言う媒介は、たぶん本」
なぜかはわからない。
好きや嫌いではなく、
私がそれを本だと思ったのは単純な直感だった。
ただ、何かに導かれるような不思議な感覚があった。 「魔王の玉座……多分これだと思う」
「魔王……なるほど」
主はなぜか納得した様子で、そのまま言葉を続ける。
「それで多分間違いないわ。
つぎは、その本の周りにできるだけ多く人を集めて」
また少しの沈黙があった。

「え?」
いまなんて言ったのか。
私は耳を疑った。人を集める?

「ち、ちょっとまって、人を集めるって」
「そのとおりよ。できるだけ多くね」

友だちは姫ひとりだけ。
父と母をいれてもせいぜい3人。
親戚はみんな私が物心着く前に他界している。
つまり、それが今の私の人間関係のすべてだ。
そんな私に人を集める手立てはない。
道行く人に声をかけて周るわけにもいかない。
なにより私にはハードルが高すぎる。
そんな私にできる人集めって一体。

「あ。」
ひとつだけある。
公に人を集められて、
まさに今私が直面している問題が。

「もうすぐ、大きなお祭りがあるの。
そこでなら、人を集められるかも」

「ほんと?」
主は少し考えたようだが、すぐに出したようだった。
「わかったわ。あなたを信じる」
「あぁ、もう時間がないわ」
「あと、この事は誰にも話さないでね」

その後の言葉。
それが今でも、私の頭から離れない。
今の私をつき動かす原動力といっていい。

「あなた達の選択は、私たちの未来の鍵」
「どうか私たちを...から...って」
壊れた蓄音機のように声はかすれて、
聞こえなくなった。

何事もなかったかのように部屋が静寂に包まれると、程なくして、母が部屋にやってきた。
甘いお菓子とお茶の香りが部屋中に広がっていく。
母はテーブルにティーカップを置きながら、
書架の前に佇んでいる私に声をかけた。

「どうしたの?難しい顔をして」
誰にも話さない。
話したところで、誰も信じはしないだろうから。
あの言葉の意味が分かるまで、私は誰にも話せない。きっとその時、私はこの本を選んだのだと、
今はそう思う。

「お母さん、本を決めたの」
「選書の本ね。もしかして。」

母が首を傾げて、私に尋ねた。
「今持っている本がそれかしら?」

たとえ反対されようと、私の答えは決まっている。

「うん。私、この本にするわ」
「なんて言う本なの?」
母の顔を真っ直ぐに見て、私は答える。

「魔王の玉座」
本の名を告げた時、
母の顔が少し悲しみに歪んだように見えた。


今、私は本を両手で抱えながら、
大勢の人たちの前に立とうとしている。

数刻先には、この本が開かれる。
すべては彼女の言葉の真意を知るため。
そう、涙を堪えるような声で、彼女は確かに言った。
「滅びから救って」、と。
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