チーム唯一の僧侶であったさこさんの、
半引退ともいえる、冒険時間の激減。
あまり冒険仲間が多いとは言えなかったおれやチームメンバーには、
かなり大きな出来事であった。
さこさんは、まだ時間にゆとりがある頃に、
こうなることを予期して、
貯金を切り崩して、慣れない木工を短期間で修行し、
チームメンバー達に、作りうる最高の武器を配って回っていた。
おれが貰ったのはー・・・
【ろうがぼう】
それも、☆☆☆の大業物。
それまで、オノ一辺倒であったおれだが、
貰ったろうがぼうをふるってみたくなったこと、
そして、さこさん(ほぼ)不在のチームでも前進を続けるため、
いちおう【本職はオノ戦士】としながらも、
【 棍僧侶 】も兼用できるよう、修練を始めた。
チームで高まる僧侶需要、
そして、強ボスやコインボスへの興味も募る中、
安穏とパラディンを鍛えるような時間はなかった。
火力面の不安は、
新メンバーのカタキさんが、
ツメを扱えるようになったことで大きく取り除かれたので、
おれは、火力のことは考えなくとも良いようになっていた。
(゜ロ)< 覚醒魔やタイガーは、最悪サポでもどうにかなろう。
棍の修練を積むうちに、
自然と、武闘家と旅芸人のLVも上がって行き、
【 氷結らんげき 】を覚えた時点で、
おれは棍僧侶や、旅芸人の使い勝手の良さに驚愕していた。
(;゜ロ)< オノレンとはなんだったのか・・・;
僧侶や旅芸人で、何体かの強ボスも撃破し、
冒険者として自信がつきはじめたころー・・・、
おれたちは、コインボス【 バズズ 】と戦い、敗れ去った。
敗れたといっても、相手を瀕死に追い込んでの惜敗といったところで、
3柱の大悪魔のうち、バズズは最強である、との噂もあり、
(゜ロ)< なら、アトラスになら勝てるんじゃね?
と、無謀な戦いを挑み、そして3分で敗れ去った。
圧倒的敗北感。
大きな敗因はおそらく、僧侶の未熟さー・・・・
それまで、【しかたなく】僧侶をしていたおれだったが、
この2度の敗北で、ようやく火がついた。
当時の日誌を読み返すと、おれはこう綴ってあった。
『いくらなんでも、お粗末すぎるだろう、おれ!』
『僧侶のLVを上げるんじゃない!僧侶ができるようになるんだ!』
『まだだ、まだまだだ!まだまだだぜ!』
『待ってろアトラス、そしてバズズ!』
『何度だって挑んでやるからな!』
『・・・福引き当たったらね!』
・・・立ち回りの強化と、
スティック、盾スキルの取得。
そして、呪文発動速度の練金の付いたきじゅつしのグローブと、
同じく発動速度の付いたユグドラシル。
対ブレスガードの盾。
対バズズ用の完全な耐性のついた水のはごろもなどの購入。
それらに費やした総額、修行にかけた時間は、
いつしか戦士やレンジャーに費やしたそれを、大きく上回っていた。
思えば、【 緑のアカオニ 】と呼ばれた、
僧侶のザラターンは、
この時産声を上げたのだろう。
時を同じくして設立された、
【 交流酒場 】で出会った、
現在に通じる多くの盟友達との出会いを経て、
おれは、当時の全ての強ボスや、アトラス、ベリアル、そしてバズズ、
災厄の王や、悪霊の神々との壮絶な戦いを、
全て僧侶として駆け抜けてゆくこととなる。
いつしか、僧侶としての腕にある程度の自信がつき、
【しかたなく】というレッテルは完全に消えていた。
この時点で、戦士と僧侶、どっちが自信あるかと聞かれたら、
間違いなく僧侶、と即答できていたであろう。
考えてみれば当然である。
【本職】と言い張っていたオノ戦士は、
強ボスともコインボスとも、ほとんど戦っていなかったのだから。
(;゜ロ)< 本職戦士の看板、そろそろ下ろすかねぇ;
しかし・・・【 交流酒場 】が呼び寄せてくれた
多くの【 縁 】が、
そもそもの【本職は○○】というおれの考え方を、
大きく変えることになったのだった。
~~~続く~~~