ザラターンの冒険日誌

ロンダの夕日や、
メルサンディの麦畑など、
アストルティアに絶景は数あれど、

おれは、昔から青い空が好きである。
青は濃ければ濃いほど、雲は少なければ少ないほど良い。

この世界、アストルティアで青空といえば、
ウェナ諸島の、抜けるような空を思い浮かべる人も多いかもしれない。
南風の暖かさを感じるウェナの空ももちろん良いのだが、

だがおれは、エルトナ大陸のー・・・
とりわけ、アズラン地方の空が一番好きだ。



駆け出しの頃、一人前の冒険者に認められて、
初めて大地の箱船に乗り、
オーグリード大陸を出てアズランの地へと降り立ったとき、
空を見上げてはっとした事を、今でも鮮明におぼえている。


(゜ロ)＜　蒼い・・・。


深緑の木々達も手伝って、
初夏の日差しを感じる、さわやかな風の吹く街。
雪と岩と荒野ばかり目にしてきたおれは、
この町並みに大いに感動したものだった。


もっと広い空をみてみたくて、街を飛び出す。
地図を広げると、林道を北に抜けた先に、岬があるのがわかった。
まだまだ駆け出しには手強い魔物達をどうにか振り切り、
緑の森を駆け抜ける。

視界が開けたその先に、その【空】はあった。






☆　　　　　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　　　　　☆ ☆　　　　　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　　　　　☆



【　風泣き岬　】と呼ばれる場所。



ここから、エルトナの海を一望できる、絶景スポットである。

しかし、おれが気になったのはやはり、
海を臨む景色より、その海よりも蒼い空だった。



しばし言葉を失い、ぼけっと空を眺める。



静かに目を閉じると、森の中では魔物達に気を取られて気づかなかった、
鳥のさえずりや木々のざわめき、風の音を感じることができた。




『　肌寒い　』




そう思った。



この感じはー・・・




夏が終わり、秋がやってくる、丁度季節の中間の空。
太陽が真上よりもやや西に傾いた、昼下がりの空。
いつかみた、ちょっとだけ切なくなるような空がそこにあった。



アズランでは、『初夏の空』を感じたはずなのに、
風の音一つでここまで印象が変わるのか・・・。



ふと視界の端に、小さな石碑が建てられているのが見えた。
いや、これは・・・墓碑。


事情は何も知らないが、
ここに葬られた人を、ぼんやりと想う。



この人も、この場所が、好きだったのだろうか・・・。



黙祷を捧げ、きびすを返した。





その後もおれは、何度かこの岬には足を運んでいる。



ここに眠る人物のことも解ったし、
前のチームの結成一周年での集合写真も、ここを推薦した。
最近では、ごくたまーに釣り竿を持って、ぼけっとしにくる。

ここで釣れるサバやサンマを、
アズランの食堂に持ち込んで、調理してもらうのも最高だろうな、など
ヨダレをたらして考えてたり・・・ｗ



(；゜ロ)＜　さ、さばの塩焼きと銀シャリ・・・！銀シャ・・・！



というわけで、
おれは風泣き岬が好きなんだなぁ、と思った次第ですｗ



　　　　　　　　　　　　　　　　　～～～FIN～～～