【バズズ】
その名を初めて聞いたのは、まだおれがハナタレ坊主の頃だった。
歳の離れた兄が読み聞かせてくれた、大冒険の物語。
物語の名は確か・・・【悪霊の神々】。
遙かな昔、ここではない、どこかの世界・・・
世界中を恐怖で震撼させた、邪教の軍団があった。
その邪教の長である、大神官が使役したという、恐ろしく強大な力を持つ三柱の大悪魔。
その一角が、【バズズ】だった。
その他にも、【バズズ】が登場する物語はいくつかあるが、一番印象に残っているのは「悪霊の神々」において他にない。
その物語では、救世の勇者達と刃を交え、激闘の末、自己を犠牲にした自爆呪文で壮絶な最期を遂げた大悪魔。
敵役とはいえ、おれは恐怖と同時に、畏怖の念すら抱いたものだった。
それから年月はながれー・・・
おれは今《魔法の迷宮》の、大広間へと続く扉の前にいる。
何の因果か知らないが、この先に待ちかまえるのはその大悪魔である。
かつて勇者達が繰り広げた物語。
その全てをなぞってきたと思うが、まさか一介の冒険者である自分がその舞台に立つ日が来ようとは。
【この世界】のバズズは、「悪霊の神々のバズズ」とは異なるもの。それは解っている。
その上、この魔法の迷宮で起こる出来事は全て、まるで白昼夢の様で、現実味がまるでない。それでもー・・・
それでもおれは、高鳴る鼓動を押さえられないでいた。
おれはこれから、伝説の魔物と戦うのだ。
このアストルティアで出会い、一緒に冒険をしてきた仲間たちと共に。
迷宮の最奥の扉の前
おれは仲間たちを見渡し、口を開いた。
ザラ 「あ、次いつ来られるか解らないんで」
ザラ 「バズズの前で記念写真でも撮りますかw」
さ、さあ、やろうかバズズ。
写真撮る前に、うっかり触れないようにしなくては!!!
いやホント!
~~~つづく~~~~