最近、巷ではよく、
「道具袋も、屋根裏も収納もパンパンだ!」
「もっと、もっとカバンを大きくしたい!」
「装備品をもっと持ち歩けるようになりたい!」
などといった声をよく聞く。
おれは、装備袋こそいっぱいいっぱいだが、収納や預かり所に預けている物の数は、他の人たちと比べて少ない方だと思う。
すぐ使わない素材はさっさと売るし、個々の敵に合わせた【耐性防具】を、ずらりと揃えられる財力もないからだ。
なので、おれは今まで収納で困ったことはなかった。
が
今日、屋根裏にモノをしまおうとしたらー・・・
いっぱいで入らなかったという;
あっれ~?;
いつの間にこんなにモノ増えたん?;
この際だ。屋根裏を大掃除して、要らないモノはすっぱり手放してしまおう。
おれはあらためて屋根裏をのぞきこんだ。
まず目に付いたのは・・・
ほこりをかぶった【初心者用のオノ】。
ああ、これは、おれが旅立つ前、【ランガーオ村】の近辺で、戦士としての修行に明け暮れていたときに振るっていたものだ。
冒険者として歩みだした頃から今日に至るまで、おれは最も信頼する武器を【オノ】としてきた。
他の初心者用武器を捨てることはできても、これだけはやはり残しておきたいなぁ・・・;
コレは残しておくとして、次は・・・
くたびれた【マタドール装備一式】。
これも忘れもしない。
裁縫を得意とするアストさんが縫ってくれて、クレイスさんが練金してくれたマタドール装備だ。
頭に★★★がついてて、練金も、大成功はあれど1つの失敗もない。
当時は【神マタドール】と絶賛して、いろんな冒険に着ていったものだ。
今では全ての職業で、この装備の適正レベルを上回ってしまったが、やっぱり結晶にしてしまうのはもったいないような気がする;
これは逆にクリーニングに出すとして、次、次。
ああ、いつ見ても心臓に悪い。このいびつな形状。
破産覚悟の悪戦苦闘の末、ついに自分の力で★★★を鍛え上げた業物。
【シャーマンアックス+3】
長らく、《シャーマンさん》と呼んで愛用してきたおれの相棒。
陸亀旅団に初めて大きな壁として立ちふさがった、【天魔クァバルナ】と死闘を繰り広げたときも、おれはこのオノを振るっていたなぁ・・・
他にも・・・
副長と二人、意地になって午前4時半までかけて手に入れた、微妙な性能の
【ハートのペンダント】・・・
さこさんが、貯金を崩して作ってくれた最高の【ろうがぼう】・・・
ああこれ、【カボチャの頭】つけてみんなでサイクロンしたなぁ;
それにこのフェンサー装備は・・・
デストロイヤーは・・・
このドラキーTシャツはたしか・・・
これは・・・兄弟がくれた、ごきげんなぼうし・・・
ああ、軽々しく手放せない物が多すぎる。
ようやく、本当の意味で解った気がする。
収納できる数を増やしてくれ、という人の声。
多くの冒険をこなしてきた人ほど、【捨てられない品】は多くなるのだ。
しかし、仮に収納、預かり所に預けられる数が増えても、無限にはなり得ない。
結局は、取捨選択を迫られることにはなるのだろう。
思い出の品。
使わないのなら結晶にして、次なる冒険の糧としてやるほうが、屋根裏にしまっておくよりいいのかもしれない。
そういう結論に至りはしたが、いざ素材屋に行こうとすると、やはり足がすくんでしまうのであった;
屋根裏はいっぱいになったが、タンスも預かり所も、まだ幾ばくかの空きがある。もう少し考えてみるとしよう。
結局問題先送りにし、屋根裏から立ち去ろうとしたおれの目に、ある品が飛び込んできた。この品はー・・・。
【チョコの帽子(うろおぼえ)?】
うん?これは・・・
なんだっけ?
これ・・・いらないんじゃね?
うん、これは・・・
すてるべw