魔法戦士・・・
その言葉を聞くと、おれにはどうしても思い浮かべる、ある知り合いの男がいる。
その男は、神出にして鬼没。単身での行動を得意とし、
卓越した剣技と、強大な魔力を併せ持っている。
戦場を流れるように駆け抜けるその姿から、冒険者たちの間で、
【幻影】の名で呼ばれているウェディの魔法戦士だ。
それが本名かどうかは、おれにはわからない。
相当な実力を持つ冒険者でありながら、容姿は端麗、単身を旨としながらも、その実、指揮能力も相当高い。
酒場で雇った即席のPTを指揮して、悪名高い暴君バサグランデ(強)を葬り去った、と言えば理解を得られると思う。
おれの持つ魔法戦士のイメージとは、まさにその【幻影】の事であった。
そう、あの日、あの男に会うまではー・・・
男は名乗った。
「バスコ・D・がまだ。」
おれはその時、丁度、ある会合(バックナンバー参照)に参加している最中だったので、自宅の前で棒立ちしていた。
突然ルーラで降り立ってきたその男。
おれは、とりあえず、口を開いた。
ザラ 「あ、すいません、今取り込み中でして;;」
がま 「OK」
がまはすごすごと走り去ってゆく。
ザラ 「す、すみませぬ~~~~;;」
それが、おれ達のファーストコンタクト。
最悪の初対面である。
それからしばらくしてー・・
その日、冒険を続けていると、
友人のウェディの姐さんから急な連絡が入った。
どうやら、水やりのお返しにと、おれの家に来てくれていた姐さんが、
件の【がま】と鉢合わせしたらしかった。
速攻で自宅の石を使い、おれは帰宅した。
畑を挟んで、がま、姐さん、そしておれ・・・
なんだこの、恐ろしく奇妙な取り合わせ。
改めて、がまは名乗る。
がま 「バスコ・D・がまです」
ザラ 「どうも、昨日はすいません;」
改めて、がまを見る。
ドングリ頭に【ぐるぐるメガネ】。
装備は、【はやてのベスト】に、下半身は、【まほうのよろい】だろうか。結晶用の装備品かと思われるが、もしお洒落で身につけているのなら、エキセントリックと言わざるを得ない。
おれが次の言葉を喋る前に、がまは矢継ぎ早に話しはじめた。
がま 「ずっと前から、ザラさんのことが・・・好きでした!!」
姐さん「!!!!!」
ザラ 「ええ~~~~~~ッ;」
がま 「お友達からお願いします!!」
な、なんなのだ、この男は・・・;
一瞬狼狽したが、どうにか平静を取り戻す。
おれは、この場は毅然とした態度で応じることにした。
ザラ 「はい!お友達からお願いします!!!!!!」
こうして結ばれた盟友関係。
がまは、お近づきのしるしに、と、おれに取引を持ちかけてきた。
気の利いたものを持ち合わせてなかったおれは、
とりあえず、【うしのふん】を4つばかし、がまの手に握らせた。
がまがおれに手渡したものはー・・・
・・・【がまのあぶら】だった。それも、99個あった。
リアクションに困っている間に、がまは姐さんとも手早くフレ登録を済ませている。
おれはニコリとして言った。
ザラ 「(姐さんを見て)あぶら半分いりませんw?」
がま 「本人目の前にして」
がま 「それ言う!?」
あぶらについては、姐さんに軽くスルーを決め込まれた。
その後しばらくして、我々は、団員の一人を加えて、魔法の迷宮に挑む流れとなった。
見ると、がまは魔法戦士のいでたちだ。
本人曰くー・・・
父は【ドルワーム王国】で名を馳せた勇敢な戦士。
母は、【アグラニの街】で評判だった魔法使いなのだとか。
【血に導かれし、運命の魔法戦士】
それが、
「バスコ・D・がま」というわけだ。
なんとなく、おれは【幻影】が、【ぐるぐるメガネ】をかけたところを想像した。・・・笑えてきた。
がまはニヤリと笑い、【メタスラコイン】を祭壇に供える。
何気に良い人である。
がまに感謝しつつ、我々は、迷宮の魔物達をけちらし、進む。
姐さんと組むのは二度目だが、改めて見ると、相当強い。うちの団に、これほどの剣の使い手はいない。
そして、がまはー・・・
うん、普通の魔法戦士でしたw
かくして、迷宮から帰還した我々は、またの再開を誓いあって、それぞれの旅路へと戻ることになった。
血に導かれし魔法戦士、がま。
興味深い男よ・・・。
実に楽しい冒険だった。
一人、自宅に帰ったおれは、大量の【がまのあぶら】を見て思った。
これは
【捨てられないもの】には
したくねぇな・・・と。
~~~FIN~~~