【シュリナ】嬢。
冒険者達の中で、この名前を知らない人は少ないのではないだろうか。
遠く、【レンダーシア大陸】は【グランゼドーラ王国】にて、大女優になることを夢見るオーガの少女。
彼女は、演技力を高める為に、その辺を歩いている冒険者に、手当たり次第に【しぐさ】のレッスンを要求する。
そして、その【しぐさ】を見せてもらう見返りとして、【ふくびき券】を配っているのだ。
各大陸には、彼女の他にも、【レナナ】女氏や、【マイタケ】少年など、冒険者に何かを見せてもらう見返りに、【ふくびき券】を配ってくれる者が何人かいるのだが、その中でも【シュリナ】嬢は、冒険者に要求するモノが比較的易しめなので、今や、大人気の存在となっていた。
彼の悪名高い【リーネ】嬢とくらべれば、冒険者達にとってはまるで彼女が天使に見えることだろう。
さて、しばらく前、ある知人の日誌にて、シュリナ嬢は、冒険者がしぐさを見せた時の、反応、というか、【感想】が、非常にユニークであることが書かれていた。
おれはあの人混みで、要求されるしぐさを見せるのがやや恥ずかしいので(オーガ♂のみなさんはちょっと解ってくれると思う;)、いつも彼女の感想をまともに聞かず、【ふくびき券】を受け取るとそそくさとその場を後にしていた。
しかし・・・
今日はうっかり、シュリナ嬢にしぐさを見せるのを、遅い時間まで忘れていたので、おれが彼女の前に行ったときは周りに冒険者が一人もいない状況だった。
これは、シュリナ嬢の話をゆっくり聞くチャンスかもしれない。
そう思い、おれは彼女に話しかけた。
要求されたしぐさは、【ベリーダンス】・・・。
オーガ族の大の男に、なんの臆面もなく、こんな要求を突きつけてくるとはー・・・
だが、いいだろう。
最近花火を持ちながらプスゴンと踊ったり、
髪型を【茶ロッコリー】にしたりして羞恥心を乗り切ったおれに、もはや怖いものなど無いと言うことを思い知らせてやろう。
我がベリーダンス、とくとご照覧あれッッ!!
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シュリナ 「・・・・・・・・・・」
ザラ 「・・・・・・・・・・」
・・・20秒後
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シュリナ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ザラ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・20秒後・・・
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【完】
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