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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 133

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ザラターンの冒険日誌

2021-12-19 16:38:04.0 2021-12-20 19:28:55.0テーマ:その他

知られざる聖戦⑧(Ver5範囲までのネタバレ注意)

蘇生呪文の輝きが身を包む。

どうやら少しの間、おれは
気を失っていたようだ。


『 衰弱状態で戦うのは危険です!
  一度、本陣まで下がって下さい! 』


…蘇生を施してくれたであろう
エルフの僧侶が、そう言い残して
他の負傷者の元に、あくせくと走って行く。


『 すまない、そうさせてもらう! 』


礼を述べると、おれは一旦体勢を整えるべく
まだぼやけ気味の頭を叱咤しながら、
前線を退いた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆



あれから…開戦からすでに
一昼夜以上の時間が過ぎていた。


冒険者達の獅子奮迅の活躍もあり、
我らが軍は善戦に善戦を重ねてはいるが…
やはり敵は数が多すぎる。

倒しても倒しても、相手の勢いは
全く衰える気配がしてこない。
一日中、万魔の塔やピラミッドで
戦い明かしているようなものである。

…地の利と
ファラザードからの補給線を活かし、
負傷者、極度の疲労者は前線から退かせ、
本陣で回復したら再び送り出すという
ローテーションを組んで
どうにか持久戦の体に持ち込めてはいるが…
はっきり言ってジリ貧状態。

兵達の疲労の色も、
段々と隠せなくなりつつある。
かくいうおれも、
剣を振るう腕が、まるで棒のように
なってきているのを感じていた。


『 いよう兄弟、生きてるかい。 』


…本陣に戻ると、全体の指揮をしている
ベルトロが声をかけてきた。

『 なんとかね。』

…応急手当を受けながら、肩をすくめる。

『 実際、アンタ等アストルティア勢は
  良くやってるよ…
  俺達が持ちこたえて居られるのも、
  アンタ達のお陰さ。 』

我ながら、いつかの遠征は取りやめて正解だった、と彼は冗談めかして笑った。

『 しかし、正念場はこれからだよな… 』

二人して腕を組んで
戦況を俯瞰で見据える。
やはりどう考えても劣勢だ。


『 それなんだが… 』


おれと同じく本陣に戻って来ていた
壮年の戦士が口を開く。


『 聞いてた通り、魔物達の動きが
  おかしいと思わねえか。 』


確かに少し、疑問には感じていた。
…魔物達も生物である。
飲まず喰わずで一昼夜戦っていれば、
さすがに疲れるはず。

なのに、奴等は一心不乱に戦い、
犠牲を一切気にする風でもなく
南進してこようとする。
普段の生体からでは考えられない行動だ。

周りに続々と、
同じ疑問を抱いていた
冒険者達が集まってくる。


『 滅神由来の強大な邪気か何かで
  操られてるってのが
  妥当な筋だと思うが… 』
 
『 もしかしたら、あの中に
  指揮官っぽい術者が居るのかも。』

『 ならそいつをやっちまえば…
  魔物の洗脳が解けて、
  逆転できるんじゃあないか? 』

『 だがあの群れの中から
  どうやって探す。
  今の兵力で闇雲に突貫しても、
  返り討ちが関の山だぜ。 』

『 せめて援軍、か… 』


…相談している横で、ベルトロが
空を仰いで、口角を上げるのが見えた。


『 …おっと、その援軍サマが
  ようやくお着きのようだ。 』


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


上空から、一匹のソードフライヤーが
何かを叫びながら降りてくる。


『 ベルトロォ!
  ち、生きてやがったかヨォ! 』

『 うるせェ、遅っせぇーんだよバカ! 』

『 伝令だァ!
  我らバルディスタ軍、
  ゲルへナ方面よりそのまま
  敵陣の背後から強襲するぜェ!

  それと…気に食わねェが
  ゼクレスの親アスバル派の連中も… 』


味方が沸き立つ中、ソードフライヤーが
そこまで喋りかけた所で…

背後の、交易所前の
「アビスストーン」が煌々と明滅し、
その場所から、まるで煙のように突然、
一人の魔族の少女が現れた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 うわっ、埃っぽいわね…! 
  まぁア…バ…の為、仕方……か… 』


…小声で何か呟きながら、
少女はベルトロの前まで、
不機嫌そうな顔でズンズンと歩いてくる。


『 これはこれは!
  お待ちしておりましたよォ
  リンべリィお嬢様…! 』


どことなく慇懃無礼なベルトロの態度に
鼻を鳴らしながら、彼の鼻先に
勢い良く人差し指を突きつけ、
華奢な体に似合わぬ良く通る甲高い声で
リンベリィと呼ばれた少女は怒鳴った。


『 まったく!アンタ達が
  ふがいないからっ!

  べラストルの名の元、名士達に
  兵を出させてきてあげたわよっ! 』


ベルトロは、苦笑いのまま平伏する。


…事情は分からないが、
こちらは望外の援軍を得られたようだ。

少しだけ現状に、
光明が差し込んで来たようである。


~~つづく~~
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