【水やりWARS・完結編・前編】
謎の【水やりドワ子】は、今日もまたやってきていた。
チャイムにはまた、「どわ…どわ…」と、おれには理解できない文字が書かれている。
だが、畑にはいつも律儀に水も肥料もくれているし、どうやら、三日坊主で
「なげっぱなし」にするような気配はしなかったので、おれはもう、開き直ることにした。
いつかはヒントを残してくれることもあるかもしれない・・・。
さて・・・
気を取り直し、おれは今日、仕事で【メギストリス領】の東端にて、【マジックアーマー】と呼ばれる魔物を退治していた。
東端には、この魔鎧の魔物の他に、【シルバーデビル】や【リューイーソー】などといった、熟練の冒険者にとって魅力的な魔物が闊歩しているので、そいつ等もついでに狩ってしまおうという魂胆でもある。
魔鎧の強烈な一撃、そして堅さに、想定外の苦戦を強いられながらも、何とか一体一体、確実に葬っていく・・・。
戦いのさなか、おれはふと、背後に視線を感じた。
振り返ってみると、そこには、停止状態のドルボードに乗ったまま、こちらを見ている人間の少女の姿があった。
華奢な姿に物々しい鎧を身にまとい、その背には、小柄な身体に不釣り合いな巨大な両手剣を背負っている。
幼さを色濃く残した顔立ちからは、とてもそうは見えないが、
戦士・・・なのだろうか。
なんだか、申し訳なさそうにこちらを見ている。
状況が全く理解できなかったが、とりあえずおれは、目の前の敵を倒すことに専念した。
戦闘が一息ついたのを確認して、少女はドルボードから降り、こちらに駆け寄ってきた。
やはり、おれに何か用なのだろうか・・・。はっきりいって、心当たりは全くないのだが。
何の用か、と、聞こうとした矢先、少女は急に頭を下げて、早口で叫んだ。
「うちの子がすいません!!」
・・・?
なんのことを言っているのだろう。一瞬思ったが、
おれは何となく【水やりドワ子】のことを思い浮かべていた。
だが、この少女はとても子供がいるように見えない。というか、種族違うだろ、大丈夫かおれ;
混乱する頭からドワ子を追い払い、おれは少女にどういうことなのか訪ねた。
もしかしたらただの人違いだったりしてー・・・w
そう思ったのもつかの間、少女の口からは、意外にも、まさにそのドワ子の名が語られたのだった。
~~~つづく~~~