【とんだ一日・前編】
【悪魔系400討伐!!】
今日新たに入ってきた、チームクエの討伐依頼である。
団の仲間たちと、【日替わり討伐】と【魔法の迷宮】を済ませたおれは、
解散後、鍛錬がてら、【ガルバ・ゴルバ】でも狩りに行くか、と、
【メギストリス】酒場でサポート仲間を募っていた。
だが突如、思いがけない人物から連絡が入り、事態は一変する事になる。
あえて名前は伏せまい。
【まつかぜ】氏ーーー・・・・
この名を聞いて、ピンとくる人もいるかもしれない。
何せこのアストルティアにおいて、彼は相当な知名度を誇っているからだ。
天下御免の歌舞伎者。
アストルティアの誇る【スーパースター】・・・。
・・・しがない冒険者であるおれにとって、彼は全く関わりのない世界の人間であると(オーガだけど)、そう思っていたのだがー・・・
ひょんな事から彼と知り合って以来、おれは、
彼主催の【花火大会】に、まがりなりにも、運営側として招待されるなど、かなり良くしていただいている。
何ともまあ、奇妙な縁である。
しかし、花火大会も幕を閉じ、これからは彼と会う機会も減るだろう。
そう思っていた矢先の出来事だった。
「さあ、疲れに行こうぜ!!」
まつかぜ氏はそう言った。
何か面白いことを考えているような声だった。
誘いに乗って、のこのこやってきたおれを見て、氏はにやりと笑う。
まつかぜ氏 「【大会の打ち上げ】みたいなもんだw」
そう言って、氏は握り拳に乗せたコインを、親指でピンと弾いた。
空中で閃いた一枚のコイン。
そこには、かの大悪魔
【ベリアル】の紋様が描かれていたー・・・
かくして、おれは、
最も危険な【悪魔系討伐】をやる羽目になるのだった。
★ ★ ★
まつかぜ氏の家で顔を合わせたのは、
氏と並んで、先の大会の主催者の一人を勤めた
【アルバ】女氏。
そしてそのご姉弟(文字に語弊があったらすいませぬw事情がよくわかってないのでw)である、
【シオン】氏だった。
他に人影は見あたらない。
主催の方々の【打ち上げ】に、何でおれが呼ばれてるのよ・・・;
もっと、この場にふさわしい人達はいくらでもいるのではないか、と、思ったが
話に水を差すのも良くないので、とりあえずは、おれは何もいわないことにした。
【ベリアル】に挑むのが初めてのおれ(と、シオン氏)の為に、まつかぜ氏とアルバ女氏は、簡単な攻略法を説明してくれた。
かなり軽い感じの冗談を交わしながらでも、やるべき事は自然とすんなり頭に入ってくる。
先の大会の時にも思ったが、やはりお二方は、こういう事に慣れているのだろうか。流石としか言いようがない。
まつかぜ氏 「まあ、負けないから大丈夫よ」
不安に駆られるおれを見て、不敵に笑いながら氏は言った。
そう言われると、不思議と、本当に勝てそうな気がしてくる。
まがりなりにも、一旅団の団長を勤めるおれには、彼に見習うべき事が山のようにあるのではないか、と、思えた。
氏の言葉の通り、大悪魔はあっけなく倒された。
バズズ、アトラスと、苦渋を舐めさせられたおれは、少々拍子抜けしてしまったほどだ。
そして、
優しさと悔し涙を調合した水瓶を、3つばかり握りしめ、
我々は生還を果たした。
しかし、このベリアル戦は、
今回の【打ち上げ】の
ほんの序章にしかすぎなかったのである。
~~~つづく~~~