今より遡ること、3000年の昔…
ドワチャッカ大陸に
高度な文明を誇りし3つの大国あり。
跳梁跋扈の、時の大陸切り拓くは
【大地の三闘士】と呼ばれし英雄達。
それぞれが興した、三つの王国。
すなわち…
閃光王カブに連なるガテリア皇国。
震天王ナンナに連なるウルベア地下帝国。
そして、賢哲王ドルタムに連なるドルワーム王国。
ガテリアに伝わりし技は、
ドワーフの文明を飛躍的に豊かにした。
ウルベアに伝わりし炎は、
ドワーフの敵をことごとく薙ぎ払った。
ドルワームに伝わりし炉は、
太陽の力すらドワーフの力とした。
おお…崇めよ。讃えよ。
『 ららー♪我らが王国♪
我らが大地の三闘士~♪
…ってね!
…激しい剣戟の音に混じって、ハープの音色と
吟遊詩人の歌が、癒しのメロディとなって鳴り響く。大した戦闘能力をもたないエスタータだが、
旅芸人や踊り子のように、
歌に魔力を乗せることはできるらしい。
『 いけぇー!負けるなー!
『 やれやれ、外野で呑気に演奏会かよ。
ツキモリはいつもの嘆息だが、
回復手段があるのは正直心強い。
『 で!?
☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 院長!こいつはウルベア産かい?
ガテリア産かい?
それとも…うおっとと!!
生き物のようにうねる機械じかけの尾から、
無数の矢が放たれる!
奴の背中側に回り込んで事なきを得たが…
鋼鉄のボディは、一瞬にして180度半回転して
こちらと軸を合わせてきた。
ほとんど付け入る隙が無い。
マシン系は門外漢だが、
とりあえず、こいつが強敵なのは理解した。
『 ううむ…
どの国の技術にも当てはまる気がするが、
どの国のモノでも無いような…
フォルムだけで言えば、
魔界産のキラーマシン系列に
酷似しているのだが…
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
今回の我々のクライアントにして、
ドルワームが誇る王立研究院の
【 ドゥラ院長 】は、
腕を組んで唸った。
『 キラーマシンを鹵獲して研究、
量産した…?
いや、それではあまりにも…
やはり【心域】を創り出した
『彼ら』の願望や欲望が具現し…
ぶつぶつと考え込む院長を、
流れ矢が襲う!
咄嗟に間に割って入り、
どうにか盾で矢を弾き落とす。
間一髪だ。
『 話を振って悪かった、院長!
安全な所へ避難しておいてくれ!
『 おっと失礼!そうしよう。
とにかく、こちらが欲しいのは
彼…キラーシーカーを形成している
部品の一部だ。
気をつけて頑張ってくれたまえ。
院長が下がると同時に、
おれはツキモリと頷き合って、
ツキモリの呪文の詠唱の間、
キラーシーカーの注意を引きつけるべく
前線へ躍り出るのだった。
☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 ふう、マジか…呪文まで使いやがったぞ
あの機械…
死闘終わって。
肩で息をしながら、
皆の傷の具合を確認する。
重傷はどうやら避けられたようだ。
落ち着いて辺りを見まわしてみると、
改めて、今居る場所が異様な光景なのが分かる。
地形こそゴブル砂漠に似ているが…
妙な色に輝く空の下、生い茂る謎の木からは、
良く分からない緑色の炎のような
エネルギー体が噴き出している。
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
極め付けに、山あいを見上げれば…
あれは…大地の三闘士…の内の、
オノ持ってるから、閃光王の像、か?
心なしか、憤怒の形相をたたえているように
見えるのは、おれの気のせいだろうか。
…エックスさんの足取りを追って
ドワチャッカ大陸を訪れた我々。
情報に釣られて、
ドゥラ院長の護衛を引き受けたは良いものの…
行き着いた先が、こんな不思議空間だとは。
まあ、冒険者も長いと、
こんな空間に出逢わす事は珍しくはないか。
とりあえず息はできるし…
ナドラガンドみたいな灼熱や極寒…
地獄のような環境下でもない。
うむ、冒険に支障無し!
『 魔界のが劣悪だぜ。魔瘴もないしな。
『 だな。壁から毒も噴き出さないし。
『 キミら今まで
どんなとこ旅してきたの…
エスタータの呆れ声を聞きながら
怪我の手当てをしていると、
マシンの残骸を調べていた
ドゥラ院長が手ぶらで戻って来た。
『 やあ、お待たせした。
結果から報告しよう。
目当ての部品は壊れてしまっていた。
だからもう一体、討伐をお願いしたい。
出来れば、今度はもう少し優しく破壊して
くれるとありがたいのだがね。
三人、笑顔で顔を見合わせる。
……
『『『 はあ!? 』』』
~つづく~