古代の映写機から再生された映像には、
驚くべき事に、震天王ナンナ…を始めとした、
四千年前の大英雄、大地の三闘士たちが
映し出されていた。
その内容は、彼らがカルサドラ火山から持ち帰り、
その力をドワチャッカの繁栄に大いに役立てたという聖なる火種『 原初の炎 』を…
後世受け継ぐ者へ向けた、
『くれぐれも人道的に扱うように』
との警告…
いや、正確には恐らく、その警告映像の
『NG版』?だろうか。
警告映像は、途中から悪ふざけで乱入して来た
カブの登場でグダグダになり…
最終的に、怒ったナンナの戦鎚の一撃、
ランドインパクトにカブごと巻き込まれた、
撮影者らしきドルタムが気絶したらしく、
そこで途切れていたのだった。
故に、おれの印象に残ったのは
警告の内容よりも…
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 仲良し、だったんだな… 』
…普通の若者達のようにじゃれ合う、
ありし日の英雄達の姿、そのものだった。
しかし、おれは知っている。
いや、ドワチャッカの歴史を紐解く者なら、
誰もが知っている史実…
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
彼らが築いた集落を元に生まれた三つの王国…
その内の、ウルベアとガテリアはその後、
神話時代を除けばアストルティア史上、
最大規模の被害を出した
大戦争を引き起こす事になる。
そしてその結果…
ウルベアはガテリアを滅亡させたのである。
『 ウルベアに伝わりし炎は、
ドワーフの敵を悉く薙ぎ払った、か。
『 コレを見た後だと
皮肉、になってしまうね。
彼らの警告は、虚しくも
後世の者達には届かなかった、のだろうか。
聡明な王の子が、その子の子が。
同じ様に聡明とは限らない。
人は、過ちを犯す生き物。
結局…魔族が居なくても。魔物が居なくても。
人同士で争いは起こしてしまうものなのだろうか。
この歴史を知ったら、
三闘士達は何を思うだろう。
『 まあ…死人に口無し、か。
『 いいや、それがそうでも無いんだ。
『 …うん?
おれの言葉に、ドゥラ院長は
おもむろに首を振り…
『 報酬は…エックス氏の情報だったね。
そう言って、ぽつぽつと語り始めた。
最近ドワチャッカ大陸に、
『悪神』として、三闘士達が再臨した事。
おれ達が行った、あの不思議空間が、
『心域』と呼ばれる、悪神の記憶と心象が
作り出した小世界だったという事。
愚かな末裔達に絶望した三闘士のチカラによって、
カルサドラ火山が噴火しかけ、
大陸が滅亡の危機に陥っていた事。
そして…
彼らに『希望の花』を示して
見事、その絶望を打ち払い、鎮めたのが
現代に生きるドワーフ達と…
件のエックスさん一行だったと言う事。
『 そんな事になっていたとは。
『 危うくドワ着火インフェルノだったね…
『 ドワ着火インフェルノ!?
そして腕を組んで唸るエスタータに
院長は意味も分からず驚愕するのだった。
…エックスさんの次なる行き先を聞いた我々は、
院長と別れ、大地の方舟に乗り込むべく、
意気揚々とガタラ駅へと向かう。
はずだったが…
だがおれの頭には、別れ際に院長から聞いた話が
どうにも引っかかっていた。
賢哲王ドルタムによると、
神となった彼らは、呪いによって
『負の想念』を増幅され、
正気を失い、悪神へと堕とされていたのだと言う。
つまり…神となる程の英雄をも
弄ぶ事のできる存在がいるって事だ。
滅神の去った、この世界のどこかに。
『 おいおい、一体何の冗談よ…
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
そして。
悪神在るところ、
必ず現れる救世主の存在。
神、天使、そして英雄。
彼らはきっと、無関係じゃない。
やれやれ、なんだかまた、
きな臭い話になってきそうである。
~つづく~