心域、白亜の王城での戦いは続く。
『 へえ…騎士崩れってかァ?
面白い奴だなアンタ!
『 そりゃどうも!
腹に一撃『良いの』を貰ったはずの船長だったが、
後ずさりしながらも、おれの攻撃を躱し続けていた。相当辛いはずだが…何という根性と身のこなしだ。
だが、ここで情けをかけるワケにはいかない。
剣速を緩めず、一歩一歩追い詰めてゆく。
『 陸に置いとくにゃ惜しい野郎だ。
どうよ、俺と一緒に海賊やらねーか?
元騎士の海賊なんて、陰があって
モテるんじゃねェ?へへっ!
口先でこちらのペースを乱すつもりだろうが…
その手は食わない。
( 逆に大技で一気にケリを着ける!
さとられぬ様、剣を持つ手に力を込め、
静かに闘気を集中させる。
『 それはありがたい申し出だが…!
生憎おれは泳ぎが苦手だし…!
船酔いするんだ…よッ!!
気合いの声と共に、おれは
闘気の力で剣速を飛躍的に高め、
瞬く間に四連斬を繰り出した。
流石にこれは躱し切れまい!
しかし…
考え甘く、おれの算段は簡単に覆されてしまう。
剣を振り抜いたは良いが、手応えがまるで無いのだ。
それどころか…目の前に居たはずの
船長の姿を見失った。
どうやら大技後の一瞬の隙が
仇となってしまったようだ。
奴にはまだ、神速で動くだけの余力があったのだ。
『 そうかい…そりゃ残念だ…
暗がりの城内に、船長の声だけが不気味に響く。
( どこだ…どこに消えた…?
どこから来る…!?
柱の陰…オブジェの裏…
最大限、周りを警戒する。
…随分長く感じた数秒間の静寂の後。
事態は動いた。
ふと背後から、風を切る音が聞こえたのだ。
( ブーメラン!?
振り返り、反射的に剣で薙ぎ払う!
甲高い金属音を響かせながら、
ブーメランは床へと転がった。
( 次はどう来る?
いや待て違う、コレは…!
囮…!
そう気づいた瞬間、振り抜いたままの剣に、
異様な重圧を感じた。
姿を現した船長が、凄い勢いで
我が剣に、体ごとぶつかって来たのだ。
急いで剣を引き戻そうとするも、
何かに引っかかって動かない!
見れば、船長の得物が替わっている!
あれは…!
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 刃折りの短剣 』!
狙いは剣、その物か!!
船長はニヤリと笑うとそのまま軽く跳躍し、
空中で器用に身を捻った。
たちまち剣が悲鳴を上げる。
いや、剣だけじゃ無い!
これほどの圧が掛かれば、
例え剣が折れなくとも
腕の骨を持って行かれる!?
たまらず、おれは剣を手放した。
船長はそのまま受け身を取って床に転がると、
素早く起き上がって剣を足蹴にし、
そのまま後方へと押しやる。
『 ちっ…綺麗に折ってやろうと思ったのによ。
カンの良い野郎だ。
だァが…!
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 形勢逆転だなァ…?
船長は、勝ち誇った笑みを浮かべた。
おれには鎧がある。
無手で戦えない事もないが…
流石にあれ程の男には通用しないか。
となると…切り札は一つ。
人相手に使いたくは無かったが…
おれもまた、不敵な笑いを返す。
『 そう思うかい?
『 おいおい、まだ切り札があるってか?
勘弁してくれよォ?
『 取っておきだ。
これを凌げばあんたの勝ちかもな。
…片手で女神の印を結び、
我が身に残る闘気を、光の力へと変換してゆく。
『 面白え。じゃあ俺も取っておきで
相手してやるよ。
船長はそう言って、魔力を集中させ始めた。
意外にも、奴の切り札は呪文なのか…?
何にせよこちらに残された手は変わらない。
集中せねば。
『 名を聞いといてやるよ。
俺はゲン。
キャプテン・ゲンリュウだ。
『 ザラターン。
『 ザラたんか。覚えとくぜ。
それを最後に、ゲンは呪文の詠唱へと移った。
恐らくこれで、勝負が決まるだろう。
おれも最大限、光の力を高めてゆく。
静寂……そして。
力を高めた両者が、目を見開く!
『 グランド…!
『 いくゼェ!?メイルストロ…
『 ふんぬらーーーッ!!
『『 えっ? 』』
突然の、第三者の気合いの声と共に、
我が身はなんか…ネバネバしたものに
絡め取られた。
なんだコレ…『まだら蜘蛛糸』!?
敵の増援…!ではない。
見ればゲンも同じ様に拘束されている。
というか…その声は!!
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 エスタータ…?
それにツキモリ!
無事で!
てか、なんでおれまで…
☆ ☆ ☆
☆ ☆ ☆
『 うるさーーいッ!! 』
~つづく~