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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 130

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ザラターンの冒険日誌

2023-09-09 22:51:33.0 2023-09-10 00:12:40.0テーマ:その他

折れた魔剣(6)(※ver6.4までのネタバレ注意)

” そうか…そんな事が… ”


おれが、かつてのネクロデア領での
デッドリー男爵との出会いと、
それから派生した冒険の一部始終を語り終えると、
喋る魔剣…いやネクロデアの王子『ナジーン』は、
深い息をついた。


“ 預かり知らぬところで、
  どうやら君には世話になったようだな。
  私からも礼を言わせてほしい。 “

『 いやいやそんな…
  おれは自分が思うまま動いただけで…!
  むしろ逆に、剣だって鍛えてもらってるし!


突然あらたまって礼を言われ、
おれはだいぶ面食らった。
言い訳のように早口になるオーガを見てか、
魔王ユシュカは、くっくと笑い出す。


『 かつての男爵の領地と…
  そして屋敷があった場所の地図を、
  後で用意させるとしよう。
  それでいいよな、ナジーン?

“ 御意に。
  そこに居るとは限らないが…
  私達も、他に有力な情報は
  持ち合わせていないのだ。 ”


『 十分です!
  すみません、こんな通りすがりに、
  何から何まで…

“ 君が気にする必要はない。 “


…国は滅んでしまったが…
それでもまだ、想いや技術…
そこに『息づいていたもの』。
その全てが消えて無くなってしまった訳ではない。

…それを実感できて自分は嬉しいのだ、と、
ナジーンは続けた。


( そこに息づくもの、か…


折れた剣をぼんやりと見つめる。

おれが、こいつを振るって冒険する事もまた、
かの国が息づいている…その証の
ほんの一つにはなっていた、のだろうか?


” ファラザードの復興が落ち着いたら、
 ナジーンが会いに行く、と
 彼によろしく伝えておいてくれ。 ”

『 了解しました!


今は考えるのを止め、
ひとまずは彼の言葉に強く頷く。


『 さあて、
  辛気くせえ話は終わりだぜ。
  おい、お前!


ユシュカ王は手を叩いて、唐突に
エスタータに呼びかけた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆



『 へ?あたし?


急に話を振られたウェディは、元々大きなまなこを、さらにきょとんと見開く。


『 お前、大層な竪琴を持ってるみたいだが…
  楽師か何かなのか?

『 え、いちお吟遊詩人だけど…

『 吟遊詩人…そりゃあいい!
  酒の肴に一曲聴かせてくれよ。
  アストルティアの詩を!


『 えええっ!?


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


月は高く上がりゆく、砂の街の酒場。
ユシュカ王の大きな声と存在感もあって、
おれ達の周りには、次第に人が集まってきた。


“ なんだなんだ? ”

“ 異界からの客人ですって! ”

” なんでも、アストルティアの
  シェラザード(語り部姫)らしいぜ! “

“ 今から一曲やるってよ! “


『 おい…どうすんだ、
  シェラザードw


半笑いのツキモリが、肘で吟遊詩人を小突く。
見ればさすがのエスタータも、椅子に座ったまま
小刻みに肩を震わせている。

…かと思ってハラハラ見ていたら、


『 くぅ~!
  燃ぉおえてきたああーーッ!!!


突如背びれをピンと立て、吟遊詩人は
勢いをつけて立ち上がったのだった。


『 武者震いかよ。

『 あいつ…大物なるわ。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


エスタータが咳払いし、
竪琴を三つ爪弾く音と同時に、
ざわついていた酒場を静寂が支配しはじめる。

十分に静かになった所で、彼女は口を開いた。


____ファラザードは砂漠の国でありますが…
  アストルティアにも、
  砂漠の国がございます。
 
  そんな縁あって今宵語りまするは…
  【砂漠の狼王の、冒険と恋の物語】____



………エスタータの曲の技術は、まだ発展途上。
最初は固唾を飲んで見守っていたが…
街の人達のノリが良いのか、
意外とウケは良いようだ。

彼女が一曲謳い終わると、拍手と喝采が
場を支配し、その流れのまま、酒場は
盛大に宴ムードとなったのだった。

どこからともなく、おれの手元にも
酒のコップが回ってくる。


『 良い街だろう?


酒瓶片手に語りかけてきたのは
ユシュカ王だった。


『 ですな、素晴らしい。


浄、不浄…異邦も無法も併せ呑む。
特におれ達冒険者にとっては、
過ごしやすい国かもしれない。


『 これからの時代は、アストルティアとの
  交流にも力を入れていきたいと思ってる。
  お前ら冒険者は、その先駆けさ。
  今後とも色々頼むぜ?

『 はは…参りましたな。
  まあ、おれで力になれるなら、
  なんなりと!


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


赤毛の王と、酒を酌み交わす。
砂漠の夜は、賑やかに更けてゆくのだった。


~つづく~
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