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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 130

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ザラターンの冒険日誌

2023-11-04 11:44:32.0 2023-11-05 11:27:52.0テーマ:その他

折れた魔剣(14)(※ver6.4までのネタバレ注意)

僅かに差し込む木漏れ日の光を頼りに、我々は
薄暗く鬱蒼とした『魔紅樹』の群生地帯を進む。

下手な金属よりよほど頑丈だと言われるその樹の
根元に生えていた、巨大なキノコが…
突如足を出して歩き出したのを見て、
吟遊詩人が驚きの声を上げた。


『 わっ!何あれ!


その声に驚いたのか、樹を拠り所としていた
ドラキー達が、群れをなしてバササ、と
何処かへ飛び去って行く。


『 ただの『おばけキノコ』だっつの…
  アストルティアには居ねえのか?


こくこくと頷くエスタータを一瞥して、
ツキモリはいつもの調子で
ため息を吐くのだった。


…ここはゼクレス領、『ベルヴァインの森』。
王都に行くためには、この魔の森を
抜ける必要がある。

来るのは別に初めてでは無いのだが…
進んでも進んでも、こうも似たような景色が
続くのでは、やはり不安になってくると言うものだ。だが、今日は心強い仲間がいる。


『 いやー、
  ツキモリが地理に詳しくて助かるよ。
  前に行った時は、帰り道に、
  迷子なって変な樹海に出てさ…

『 馬鹿だろお前…
  ガウシア樹海に抜けるルートのが
  普通は見つけにくいハズだ。

『 はは…;
  迷い込んだ先、命からがらたどり着いた
  村で振る舞って貰った、
  ハーブ茶とクラムパイの味は
  今でも忘れられん。

『 えーっ!何それ食べたい!
  行こう、その村!!


急にエスタータの目の色が変わる。
しまった…余計な事を口走ったか。

今は行商人を追わねばならないので、
慌てて彼女をなだめる。
ツキモリも腕を組んで頷いた。


『 冥曜石…宝石を買うとしたら多分、
  王都の貴族達だ。
  あいつらの手に渡ってからじゃ
  場合によっちゃ、かなり厄介な事になるぜ。

『 だな、今は急がないと。
  すまん、パイはまた今度!

『 くう~、むねんじゃ!


☆   ☆   ☆


…その後もツキモリの的確な先導の下、歩き続ける。この分なら、おれ一人で行った時より数段早く
王都までたどり着けそうだ。

それにしても…


『 しっかし、ツキモリは随分と 
  この辺に詳しいんだな。
  もしかしてゼクレスの出だったり…?


素朴な疑問を、そのまま口にしてみる。


『 まあな…


ツキモリは、背を向けたまま短く答えたが…
足を止めると、
改めてぽつりと呟きはじめた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 いや…
  ゼクレス育ちじゃあるが…
  本当の故郷は知らねえ。

  覚えてねえが、
  僕は幼少の頃…ゼクレスの貴族の所に
  売られて来たらしい。
  鍋のフタも買えねえような端金でな。


『『  えっ!?  』』


『 このツキモリって名だって、
  本当の名前かどうか、わかりゃしねえんだ。

  ともかく、物心ついた時には、
  その貴族ん所で、下働き…
  いや、奴隷同然の生活をしてた。

  そんである時、耐えかねて逃げ出した。
  そして冒険者になったのさ。


皮肉に笑いながら
淡々と語るツキモリだが、
聞く限りかなり過酷な半生である。


『 そう…だったのか…
  すまん、要らん事を聞いたな…

『 別に。
  魔界じゃ珍しい話でもねえよ。


ツキモリは無感情のまま答え、
おれに背を向けたまま、再び歩き出した。

が…

いつの間にかエスタータが、
ツキモリの前に回り込んでいた。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 つ…辛がっだねえ”…!

『 はっ…!?


見れば彼女は目に涙を溜め、鼻声で喋っている。
目を丸くする、野郎二人。


『 う、うぜーな!
  今の話だけで何で泣いてんのお前!
  別に不幸自慢とかじゃねえっつーの!

『 ごべぇん、かわいそうで…ひっく!

『 ばっ…!
  可哀想なのはお前の頭だろ!

『 でも~!


赤面し、早口でまくし立てると
ツキモリは再び吟遊詩人を追い抜いて
足早に歩き出した。


『 別に…もう終わった話だ!
  ほら、さっさと行くぞ!


おれも続いて歩き出し、
なんとなくエスタータの隣に並んだ。


『 やれやれ。
  ま、今は元気そうなのが
  何よりだよな。


吟遊詩人は帽子のつばを押さえて、
目深に被り直した。


『 うん…そうだね…!


…眼前を見据えれば、
王都を取り囲む巨大な城壁の影が
見え始めでいた。


~つづく~
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