【カタキラウワ】
夜空の色の円らな瞳に、群青の毛並みをもつ、
プクリポの女性。
小さな種族であるプク達の中でも、彼女は特に小柄である。
性格はお人好しで、控えめだがユーモラス。
見た目はキュートで、何の仕草をしても愛らしいので、特に、
見知らぬ女性の方から
「かわいい^^」
と言われていることが多い。
そんな彼女だが、ひとたび戦いになると、
鬼神のごとき暴れっぷりを披露する。
ツメを用いての戦いを好み、
【火力】一点においては、団内の誰の追随をも許さない。
陸亀旅団・切り込み隊長。
【小さな冥獣】カタキラウワ。
それが彼女の肩書き。
大悪魔【バズズ】との戦いに敗れてから、旅団員達は己の鍛錬に余念がない。
カタキさんも例には漏れず、武闘家としての修練に励んでいる。
盗賊としてはすでに、かなりの技量を誇る彼女。
だが、かの大悪魔に確実に勝利するために、
奥義【一喝】を使える、武闘家の道を志すことにしたのだった。
しかし、武闘家では、彼女が必死に貯めたお金で買った、
【トレジャーシリーズ】の防具を着ることができない。
自慢ではないが、我が団に、強力な防具をホイホイ買えるような
財力を持っている者はいない。
強ボスクラスに耐えうる防具を、どう調達するか・・・
それが、問題であったのだがー・・・
ある日、カタキさんが、いつにも増して、修行に勢を出しているのを見かけたおれは、何気なく彼女に話しかけてみた。
ザラ 「あら、カタキさん、今日は気合い入ってますな!」
だが、彼女は、おれが想像もしなかった言葉できりかえしてきたのだ。
カタキさん 「はい!早く【拳聖】着られるようになりたいので!!」
(゜~゜;)< ?
拳聖ー・・・?拳聖って、あの【60装備】の拳聖シリーズ・・・?
ものすごい高級品ではないか;
まさか、彼女は、それを買うつもりなのだろうか。
詳しく話を聞いてみるとー・・・
彼女は、【拳聖シリーズ一式】を
なんと友達からもらった、と、いうのだ。
いくら親しい友人でも、友にそんな高級品をプレゼントした、という話を、おれは聞いたことがない。
その人、どんだけセレブなのよー・・・(゜ε゜;)
おれは目を白黒させて彼女に尋ねる。
するとカタキさんは急にうつむいて、泣きそうな顔になった。
おれはその様子に狼狽しながらも、彼女に先を促す。
カタキさんは、ぽつり、ぽつりとしゃべり始めた。
カタキさん「その子」
カタキさん「冒険者、やめるって・・・」
事情を察し、おれは凍り付いた。
カタキさん「自分が着るつもりで編んでた拳聖装備」
カタキさん「仲良くしてくれたお礼に、あげるって」
カタキさん「スラチャにお別れのメッセージと一緒に」
カタキさん「タンスに入ってて」
カタキさん「ううううう;;」
・・・その後、カタキさんは、そのお友達の家に走ったのだが
家があったその場所は、もうすでに更地になっていたのだという。
突然、冒険者を引退して、いなくなった友達。
その友達が残してくれた
形見とも言える【拳聖の胴着】。
おれは、何とも言えない気持ちになって、叫んだ。
ザラ 「それ着て、バズズ倒してやろうぜッッ!!!!!
彼女は、泣きながら、応答した。
カタキさん「おおう
それから程なく、彼女は60LVを迎えた。
☆ ☆ ☆
拳聖シリーズに身を包んだ彼女は、つぶやいた・・・。
カタキさん 「なんかこれ・・・思ったよりデザインが・・・・;」
カタキさん 「こしだれの、聖の字とか・・・」
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
/(.^.)\
友の形見が、自分のセンスとあわなかったら、
皆さんは、どうしますかーーーーー・・・?
~~~FIN~~~