『 おおおッ!
グランド…ネビュラーッ!!
闘気の奔流が、光の力となって
我が手の平へと集束される。
雄叫びと共に、おれはその光に
渾身の力を込めて、
眼下のラダ・ガート王に向かって照射した。
ぼちぼちこちらの体力も限界だ。
これが通用しないなら、打つ手は無い!
( これが今の おれの全力だッ!
『 届けぇェェェッ!!
しかし。
『 ぬゥンッ!
王は、空中のおれを見上げてニヤリと笑うと、
気合いの声と共に、再び亜麻色の二刀を閃かせた。
振り抜かれた剣先から発せられたのは、
弧を描いて真っ直ぐに飛ぶ真空波。
『 !!
真空の刃は、瞬く間に おれの眼前まで迫り来て
放ったばかりのグランドネビュラとかち合い…
激しくぶつかり合った二つの闘気の奔流は、
まるで威力を相殺するかの様に
轟音を響かせながら、その場で爆散するのだった。
( まったく甘く無い。というか…!
それどころか当然、近くに居るおれも
その闘気の爆散に巻き込まれるワケで…
『 ほ、ほげえェェェッ!?
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
憐れなオーガは、間抜けな悲鳴を上げながら、
試練場の大地に、本日幾度目か…
その背中を、盛大に預ける事になるのだった。
『 …ここまでにしておこう。
なかなか楽しかったぞ。
朦朧とする意識の中、近くから
ラダ・ガート王の声が聞こえてくる。
『 今の技は『王牙衝』という。
一度見せただけで対応してくるとは、
流石だな。
『 お…王牙衝…
ご、御指南…ありがとう…ございました…ッ
…ぐふッ!
『 !
おい、死ぬなよ…?
おい、ザラターン!
おい…!
ザ…タ……!
……………!
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
これが、ラダ・ガート王との
最初で最後の手合わせ。
…その顛末である。
あの後、意識を取り戻した おれは、
王と少しだけ話をした。
ほんの僅かな時間ではあったが…
きっと、忘れられない思い出となるだろう。
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
『 お前の戦い方は、
古代オルセコの剣闘術を軸として、
ガート騎士戦技と、冒険者としての
自己流を混ぜ合わせた物なのだな。
面白い戦法で、少々驚いたぞ。
『 古代オルセコの…ですか?
…ああ!
身に覚えの無い流派を聞いて一瞬、
首を傾げた おれだったが、
なるほど、故郷のルーツを考えれば、
納得のできる話だ。
考えた事も無かったが…村で教わってたのは
そんな歴史ある武術だったのか。
…王に説明がてら、村を紹介していると、
だんだん楽しくなってきた。
『 他にも、師と呼べる存在なら沢山いますよ。
パラディンの諸先輩方は勿論ですが…
猫島の巨猫族や…竜頭の魔王。
災厄の王に…いにしえの竜とか!
もっとも、仲間と共に挑んでは、
いつも命からがら生きのびてたんですがね、
はは…!
『 そうか。
お前は冒険者として、
色々な物を見てきたのだな。
俺もな…元々は孤児の出で、
お前と同じように冒険者をしていたんだ。
『 えっ…!
王はそう呟くと、
当時を懐かしむように、目を細めた。
☆ ☆ ☆
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☆ ☆ ☆
『 あてどなく世界を放浪していたものだが、
いつしか『偽りの太陽』の侵攻が始まり…
一族を連れて、転戦しながら
安住の地を探し歩いているうちに、
段々と大所帯になってきてな。
そんなこんなで、そいつらを護るために、
まあ成り行きで国を興し、王になった。
『 成り行きで!
…しかし、それも王の冒険者としての実力、
そして何より、器と人柄が為せた業だろう。
誰にでも出来る事では、決して無い。
紛れもなく英雄の偉業だ。
『 ふ、当の本人は、
のんびり地図でも描いている方が
性に合っていると言うのにな…
『 …地図、ですか?
この浮き島にも、実はその為に来たのだ、と、
王は描きかけの地図を見せてくれた。
厚めの羊皮紙に、浮き島の地形が精密に
描かれている。
冒険するには、地図は必須。
そう言い切れる程に、
地図と冒険者は切っても切れない関係にある。
中には、マッピング趣味が高じて、
もはや地図を描くために冒険をしている、
という本末が転倒した者も居る程だが…
まさかラダ・ガート王がその類だとは、意外や意外。なんだか、親近感がわいてきた。
『 その地図作成の途中で、
この変な奴を見つけた、と言うワケですな。
『 ふ、そう言う事だな!はっは!
~つづく~